日立建機日本の住岡浩二取締役社長
日立建機日本の住岡浩二取締役社長
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 日立建機の子会社で、国内のレンタル、販売、保守サービス事業を手がける日立建機日本(埼玉県草加市)は6月20日から、独自のポイント制度の本格運用を始める。同社によると建機業界では初めての取り組みという。

 ポイント制度の名称は「RSSポイント」。RSSはレンタル(Rental)、販売(Sales)、保守サービス(Service)を意味する。顧客がレンタルを利用したり、建機を購入したりした際に、販売金額に応じて共通のポイントを日立建機日本が付与する。貯まったポイントは、車載電池などの純正部品のほか、食品や日用雑貨品、旅行など幅広い景品と交換できるようにしている。ポイントの発行原資は販売促進費から当てる意向である。

 制度の特徴は、複数の事業で取引がある顧客へのポイント還元率を高めること。2つを利用する顧客には2倍、全てを利用する顧客には3倍のポイントを還元する。こうした特徴を出した狙いについて、住岡浩二取締役社長は「複数の事業で取引客が増えれば、大きな売り上げ増が期待できるため」と説明する。

 日立建機グループの2011年度実績を見ると、顧客5万社あまりのうち、レンタル・販売・保守の各サービスを2つ以上併用するのは全体の10%。つまり「レンタルだけ利用している」「製品は日立建機日本から購入するが、保守は他社に任せる」といった顧客が大半だ。

 しかしこのわずか10%の併用客は取引金額が大きい。これらの顧客の取引金額だけで、売上高全体の実に半分以上を占める。中でも全ての事業で取り引きしている顧客と、1つの事業だけで取り引きする顧客とでは、取引金額に平均約5倍の開きがあるという。従って複数の事業で取り引きする顧客が増えれば、相応に売上高の拡大が期待できるわけだ。住岡社長は「2013年度中に複数の事業で取引がある企業の比率を4ポイント(2000社に相当)高めたい」と目標を掲げる。

競合他社は一体提供が困難

 建機業界では初めてというポイント制度だが、個人向けの市場では一般的である。競合する企業同士でポイント還元率の高さを競い、体力勝負に陥っているケースが見られる。競合他社が追随すれば、建機業界でも同様の事態に陥ることも考えられる。しかし住岡社長は「還元率競争をしなくても、レンタル・販売・保守を一体で提供できるという当社ならではの強みで差異化できる」と自信を見せる。

 実は現状の建機業界は、レンタルと販売で事業会社が異なるなど、別の営業体制を敷いている企業がほとんど。このため顧客企業の管理コードが事業ごとに異なるなど、システム面で連携が取りにくくなっている可能性が高い。従って競合他社は個別の事業であればポイント制度を運用できるが、各事業を一体化させた制度を運用するのが難しいと住岡社長は見ている。