写真●グローバル経営大学の様子。次世代の経営幹部を養成する機能を果たす
写真●グローバル経営大学の様子。次世代の経営幹部を養成する機能を果たす
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 ベアリング大手の日本精工は、次世代の経営を担う幹部をグループ全体で育成するため社内に「グローバル経営大学」を開設した。2011年は欧米や中国、韓国、日本などの拠点から主に中堅社員を10人選抜し、英才教育を実施した(写真)。2012年3月に第1期生のプログラムを終えた。期間は2011年10月~2012年3月までの半年間で、4日×4回の内容だった。

 特徴的なのは、中国とインドにおける事業戦略の立案を最終課題に設定し、大塚紀男社長ら幹部の前で発表させる点だ。事業戦略の立案に当たっては、受講生らが実際に中国とインドを訪れ、現地の声を集めた。中国やインドを初めとしたアジア市場は日本に次いで売り上げ規模が大きい。最終課題の設定は、こうした社の戦略と連動している。

 「各地域の優秀な人材の能力を伸ばすことで、ビジネスの現地化を加速したい。幹部の定着率を高めることにもつながる」。日本精工 人事部グローバル人事室の山下正洋氏はグローバル経営大学を置いた狙いをこう話す。

 ただ、開始当初は「果たしてうまくいくのか」という不安が大きかったという。英語が堪能で、強く主張できる数人だけが議論を主導する状態が続いたためだ。そこで外部の講師らの力も借りて「控えめな人には『どう議論を深めるのか』などをアドバイスする一方、自分たちの意見を一方的に主張する人には相手を尊重する姿勢が身に付くように支援した。それで運営が一気に軌道に乗り、議論も深まった。充実した研修になった」(山下氏)。

 最終回は10人を2チームに分け、大塚社長らを前にプレゼンテーションを実施した。そこで、いくつかの提案が高く評価され、事業化の可能性もあるという。

 現在は第2回目の実施に向けて前回の反省点を洗い出している段階だ。次回も10人ほどの規模になる見込み。日本精工はグローバル経営大学だけでなく、日本人社員の英語での業務を支援するために「社内英会話サロン」も始めている。様々な施策を実施し、グローバル企業への脱皮を模索している。