富士ゼロックスが東日本大震災やタイの洪水で得た教訓を生かしながら、調達システムのBCP(事業継続計画)機能を強化している。デジタル複合機などの生産機種ごとに、どの部品がどの仕入れ先のどこの拠点で作られているのかを世界地図の上にあらかじめマッピングしておく。こうすることで、仕入れる部品の「座標調査」をいつでも短時間で実施できるようにする。

 東日本大震災では被災地に点在する254カ所の仕入れ先の事業所と手作業で情報交換したため、状況把握だけで約3週間を要した。この時間を少しでも縮めて、自社の生産へのインパクトを即座に理解し、経営判断を速めたい考えだ。

 新システムで鍵を握るのは、仕入れ先の事業所の位置を全世界共通でピンポイントに特定できる、緯度と経度の座標情報である。これにより、例えば東日本大震災で発生した原発事故のようなトラブルが発生した場合に、立ち入りが制限された地域に仕入れ先の事業所があるのかどうかを瞬時に把握できるようにする。タイの洪水のような場合も同様で、洪水の被害地域に仕入れ先の事業所があるのかを素早く知ることができる。

 富士ゼロックスは2011年から、海外を含めた仕入れ先の本社や工場、倉庫などの座標情報をシステムに登録してきている。2012年4月時点で、3000カ所以上を登録済みだ。

 座標情報で仕入れ先の被災状況をある程度想定できようになると、部品調達への影響度合いを富士ゼロックス側で集約できる。すると生産機種ごとに自社での対応を協議しやすくなる。

 今後は座標情報を使って、ある部品の調達が特定の地域に集中しすぎていないかも調べていく。タイの洪水ではハードディスク装置や電子部品に被害が集中するなど、特定部品の集積エリアが一度に打撃を受けると調達が逼迫する苦い経験をした。将来的には調達地域の拡大も見据え、まずは仕入れ先の立地をシステムで正しく把握しておくことを先行して進める。