トーハンの中村勉執行役員システム部長(写真撮影:北山 宏一)
トーハンの中村勉執行役員システム部長(写真撮影:北山 宏一)
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 出版取次大手であるトーハン(東京都新宿区)は、書籍や雑誌の売れ行きや市場に出回っている在庫量を「見える化」する情報システム「TONETS i」を2012年第2四半期に稼働させ、出版社に提供する。トーハンの中村勉執行役員システム部長は「在庫量が適切かどうかを判断しやすくして、販売効率の改善や返品数の削減に役立ててもらう」と語る。

 出版社は従来、書店から書籍や雑誌の注文を受けても、希望通りの量を配本しないことが少なからずあった。背景には、書店が売れ残った書籍を出版社に返品できる書籍流通独特の仕組みがある。この仕組みにより、出版社が返品の痛手を被ることを不安視し、適切な量を発注している書店にも十分に書籍を配本しない事態が発生していた。

 こうした問題について中村執行役員は「書店と出版社がお互いの実績を知らないことが原因」と指摘する。TONETS iによって、出版社が発注元の書店の販売実績や、市場の在庫状況を確認できるようになれば、各書店に適切な量を配本しやすくなる。

 販売力に優れた書店に適量を配本することで、出版社は売り逃しを防げるうえ、返品の削減も期待できる。このように出版社と書店の販売効率が高まれば、両者の間に立つトーハンにとっても利益の増加につながる。

 なお、TONETS iで利用する書籍・雑誌の販売動向や在庫量のデータは、トーハンが2011年から運用している書店向け業務支援システムのクラウド型サービス「TONETS V」で蓄積してきたものを転用する考え。出版社に合った画面表示を設計することで稼働する。