ポイントはここ!

●クラウド利用によりハード/ソフトのメンテナンス不要に

●使用ディスクスペースに応じて課金するサービスを選択

JFEスチール

 大手鉄鋼メーカーのJFEスチールは、2011年からグループウエア統合に着手している。現在、全国の拠点への展開を推進中だ。グループウエアとしては、KDDIが提供するクラウドサービス「KDDI Knowledge Suite」を採用した。従来、拠点や組織ごとにバラバラに構築・運用していたスケジューラーや会議室予約システムを一元化する。

 クラウドサービスを採用した最大の理由はコスト。社内で独自にサーバーを構築運用する場合に比べ、おおよそ5分の1から3分の1程度の費用で統合を実現できるという。

システムの共通化を推進

 同社は2003年4月に川崎製鉄と日本鋼管の統合により発足したが、統合が発表された2001年以来、社内システムの統合と再編を進めている。例えば基幹システムについては、Javaなどの最新オープン技術を採用した新統合基幹システム「J-Smile」を構築し、2006年3月に運用を始めた。

 ネットワークについては3年ごとの中期計画を策定して改良を進めており、2009~2011年の第3次中期計画で大規模な再編を行った。従来は、地区ごと、あるいは本社支社や研究所のような組織種別ごとに構築した支線ネットワークを、全社を結ぶ基幹ネットワーク(JFEリンク)に接続する階層構造になっていた(図1上)。ただ、それぞれの支線ネットワークの独立性が高いために、全く別々に管理しなければならず、管理コストが高くついていた。

図1●JFEスチールのネットワーク構成<br>2009年から推進している第3次中期計画で、これまで拠点ごとに構成していたネットワークを廃止し、全社ネットワーク(JFEリンク)に直接接続する方式に改めた。JFEリンクは、二つの通信事業者のWANを使う2重構成とし、安全性を確保。同時に、帯域増強と帯域制御によって通信品質を向上させた。
図1●JFEスチールのネットワーク構成
2009年から推進している第3次中期計画で、これまで拠点ごとに構成していたネットワークを廃止し、全社ネットワーク(JFEリンク)に直接接続する方式に改めた。JFEリンクは、二つの通信事業者のWANを使う2重構成とし、安全性を確保。同時に、帯域増強と帯域制御によって通信品質を向上させた。
[画像のクリックで拡大表示]

 異なる支線ネットワーク間は、デフォルト設定では通信を認めておらず、柔軟性に欠ける面もあった。例えば、単にファイル共有するだけでも、地区をまたぐ場合には、支線ネットワークの網間接続の許可を申請し、それぞれのIPアドレスを登録するなどの手続きが必要だった。

 これではシステムを統合しても使い勝手が悪い。そこで第3次中期計画では、各拠点からJFEリンクに直接接続するようにネットワーク構成を改めた(図1下)。JFEリンク自体も回線増強や冗長化を図るとともに、帯域制御の仕組みを導入した。改良後のJFEリンクのWAN回線速度は、データセンターでは200Mビット/秒、各地区が20Mビット/秒である。