「ストロー橋」の研修に取り組む、富士ゼロックスグループの技術系担当の役員たち
「ストロー橋」の研修に取り組む、富士ゼロックスグループの技術系担当の役員たち
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 富士ゼロックスは2012年4月をメドに、約2100人の技術系社員を対象にした、独自の「問題解決力」研修を終える。2011年秋からこの研修を始めており、2012年2月初旬までに1400人が受講を完了した。2011年12月末には技術系の役員22人も全員、同じメニューを受講。新人から役員まで同じ問題解決手法に基づいて会話できる経営環境を早急に整える。

 研修メニューは富士ゼロックスが独自に開発した。生みの親である鈴木洋司人事本部教育部組織力強化センター問題発見力強化担当マネジャーは2007年から、問題解決に必要なノウハウを体系化してきた。もともとは新人研修用に作ったカリキュラムだったが、社内で好評だったため、技術系社員全員に展開することにした。

 1日がかりの研修では主要な10のスキルを解説する。なかでも「想像力・企画力」「仮説検証力」「SRストーリー展開力」の3つを体験形式で学ぶ。特筆すべきは独自のSRストーリー展開力で、Sはシステム、Rは結果を意味する。

 どのようなシステム(仕組み)で、どんな結果が得られるのかを、ロジックツリーやQC(品質管理)の特性要因図などを使って、論理的に解きほぐしていく。「技術系社員なら一度は聞いたことがある手法を使いつつも、それぞれの手法をどんな問題のどんな場面に適用すればよいのかを教え込む」(鈴木マネジャー)。こうして、あるべき姿と現状のギャップを埋める。ギャップがすなわち、解決すべき問題に相当する。

ストロー橋の製作で手法を体験的に身に付ける

 研修メニューもさることながら、特徴的なのは研修の後半で問題解決の疑似体験をさせることだ。題材は鈴木マネジャーが考案した「ストロー橋」の製作である。

 これは、接着剤などが何もない状態で、先が折れ曲がる市販のストローだけを組み合わせて橋を作り、その強度と軽さ、コスト(使用本数)を競うものだ。目標を定め、SRストーリーに沿って、橋の強度や軽さを時間内にチームでどんどん改善していく。

 研修に参加した役員も一様に、ストロー橋を体験した(写真)。その1人である鶴岡亮一執行役員デバイス開発本部長は早速、2012年の年頭に、年末の研修体験の報告を交えて、自分の考えを部下に電子メールで配信して伝えた。「みんなで同じ研修を体験し、思考の土俵がそろったところで自分の考えを述べた。研修後は部下からの報告がSRストーリーに沿ったものに変わってきたと感じる」(鶴岡執行役員)。これが社内の共通言語を作るということなのだろう。これを基に次は自由な対話ができる社風を強化する。