ポイントはここ!

●LAN統合でコスト削減と外部への容易な情報提供を実現

●仮想化/クラウド技術を生かして診療の継続性を確保

慈泉会 相澤病院

 中信地域の急性期病院として活躍する相澤病院は、地域内の医療機関で患者の医療情報を共有する地域医療連携ネットワーク構築を目標として、積極的かつ戦略的にシステムやネットワークに投資している。

 急性期病院というのは、救急病院のように発症から時間がない患者に一定期間集中的な治療を施す病院。専門性・先進性が高い。半面、回復期の医療などでは他の病院との連携が欠かせない。こうしたことから相澤病院では、地域医療連携ネットワークの構築を目指している。

 2011年6月には、同院の将来構想の中核となる「タイムライン型診療情報連携システム」の試験提供を開始した。システムはNTT東日本との共同運用である。

 タイムライン型診療情報連携システムは、ベンダーや仕様が違う電子カルテシステムやレセコンを連携させるための仕組み。患者の診療情報を時系列に一覧表示させられる点が大きな特徴である。従来の診療情報連携の中心だった電子カルテ画面の共有と違って、情報そのものを連携させやすい。情報を時系列に並べて見られるため、ある期間内の診療記録を見落とす危険も少なくなる。

 このほか同院では、東日本大震災による被災の様子を見て、システムの仮想化やクラウド化に取り組み始めた。

 いずれも、主眼は「地域全体での診療の継続性を確保すること」にある。多くの病院では、情報システムは院内に閉じたもので、患者がかかる病院を変えた場合に診療の継続性を確保できないことが多い。相澤病院の例は、病院間の連携と事業継続の両方を目指した、医療機関としては一歩進んだ取り組みといえる。

情報活用を主眼にLANを統合

 病院内のシステム連携と情報共有、地域での診療の継続性確保は、同院の情報システム部長である熊井達氏が、2000年に着任した当初から目指していたこと。初めからタイムライン型診療情報連携システムやクラウドのアイデアがあったわけではないが、システム連携と情報共有の実現に向けて少しずつ取り組んできた。

 熊井部長は、「多くの病院は院内の情報共有すら十分ではない」と語る。情報共有が不十分な原因は、いまだに院内LANが分断されていること。相澤病院においても、かつては医療情報システム(HIS)系と医療画像管理システム(PACS)系、インターネット系のLANは院内で分断された状態になっていた。

 例えばセキュリティ確保などLANを分断していることに意義があれば別だが、医療機関の場合、必ずしもそういうわけではなさそうだ。熊井部長は、「大抵は医療機器ベンダーの囲い込みによって生じる現象であって、目的があるわけではない」と断じる。