アサヒビールは2012年4月、米アップルのタブレット端末「iPad2」を導入し、首都圏業務用統括本部東京支社全支店の営業担当者約150人が利用を始める。情報武装によって顧客への提案力を向上するとともに、移動時間などを有効に利用して提案内容の質を高める。同社は生産性向上のため、直行直帰型営業やフリーアドレスオフィスなどのワークスタイル改革を推進しており、iPad導入でモバイル環境での仕事を支援することもその一環と位置づける。

 

 iPadを活用するのは、料飲店や業務用酒販店などへの営業担当者。商品カタログや動画などを使った得意先への提案資料を配信するほか、リモートアクセスによって社内のパソコン経由で営業日報システムなどの業務システムを利用できる。またメール専用のアプリも導入し、会社に戻らなくても連絡事項の確認ができるようにする。

 同社では2011年春から生産性の向上を目標にワークスタイル改革を推進し、営業部門では直行直帰の勤務体制を導入することで、取引先への訪問時間を増やすことを狙っている。2011年からカーシェアリングやレンタカー会社と法人契約を結び、自宅近辺で車を借りて、効率的に得意先周りをできる環境も整えた。これによって社用車を利用するために支社などに立ち寄らなくても営業活動ができるようになった。しかし従来は、営業日報を書いたり、取引先からの問い合わせを社内で確認したりするために会社に立ち寄る必要性があり、直行直帰がなかなか浸透していなかった。

 そこでiPadの導入により、社外からの報告や相談業務を支援する。2011年9月から都内の支店でテスト導入を開始し、13人がiPadを活用したところ、ほとんどの社員が移動時間の削減による商談時間の増加や、問い合わせへの回答の迅速化などの効果があったとしたため、導入の拡大を決めた。

 現時点ではiPadから社内の業務システムにアクセスするためには、各社員の自席パソコンを立ち上げておく必要があるが、「今後は仮想デスクトップ環境を整備し、iPadから直接サーバーにアクセスして業務システムを利用できるようにすることも検討している」とアサヒグループホールディングスIT部門の知久龍人ゼネラルマネジャーは話す。既に都内の一部の支社ではフリーアドレスを導入しているが、今後はiPadと仮想デスクトップ環境を前提に、各社員のパソコンを共有端末に置き換えることも検討していく。