プリンスホテルの粕谷吉彦取締役常務執行役員営業第1部担当
プリンスホテルの粕谷吉彦取締役常務執行役員営業第1部担当
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 プリンスホテル(東京都豊島区)が営業改革にまい進している。2010年から全国各地のホテルを一括して売り込む本社の営業組織を強化し、「オールプリンス」で収益力を高める。それに伴い全国各地のホテルから営業部員を本社に呼び寄せて、混合チームを結成している。本社営業部員のネットワークと、地域の実情を良く知る各ホテルの営業部員が力を合わせることで、相乗効果を高めることが狙いだ。

 既に成果も出始め、本社の営業部員が、首都圏以外のホテルの宿泊や宴会などを法人から受注した件数は2011年4~9月で約430件(売上高は約1億1300万円)と、前年同期比で3.6倍になった。下半期は受注件数1000件、売上高3億円を目指す。

 「湖畔や高原など全国各地の一等地に施設を持っているにもかかわらず、これまでその強みや魅力を十分に伝えてこられなかった。これを改めたい」。大手金融機関から2010年6月にプリンスホテルに転じ、営業部門を指揮する粕谷吉彦取締役常務執行役員営業第1部担当はこう話す(写真)。これまでは本社の営業部門のほかに、各ホテルが個別に営業部門を持ち、それぞれで営業活動を展開していた。そのため担当のホテルは売り込むが、それ以外の営業への意識が生まれにくかった。何より「プリンスホテル」という全国ブランドを持ちながら、約50を超える施設全体の魅力を語る発想が弱かった。

 粕谷常務はそこに強化の糸口を見出した。「新潟県の苗場であれば宿泊客の9割近くは1都3県からのお客様だ。各ホテルが個別に営業をしていては地域に限定されやすくなり、遠方からの潜在顧客を逃がしかねない。だからこそ全国各地のホテルを一斉に販促することが大切」(粕谷常務)。それが「オールプリンス」の強化につながった。

 プリンスホテルではこれまでも本社に全国向けの営業部隊を置いてきた。しかし、結局は担当地域のホテルの営業への取り組みと実績が勝り、全国営業はうまく機能しなかった。その反省も踏まえて、粕谷常務は念入りに運営している。

社内で研究会やコンテストも開く

 社員の意識を高めるため粕谷常務が各ホテルを訪ね、営業部員らと膝詰めで数時間も話し合う機会を設けた。2010年10月には「事業所研究会」という名称で、各ホテルの特徴や周辺地域の情報について営業部員が毎月のように知識を得られる仕組みを設けた。また10月には営業部員がその受注成果を披露する「全社営業コンテスト」も開催した。

 さらに粕谷常務は、所属地域以外のホテルへの送客目標も細かく設定した。こうして社員の意識改革を強める。 粕谷常務は「営業改革はまだ1合目。今後は営業ツールのIT(情報技術)化も進めたい」と話す。国内のホテル産業を巡っては、外資系高級ホテルの参入で勢力地図が変わりつつある。老舗の名門ホテルチェーンが進める営業改革は全社の団結を高める意味でも、時機にあった取り組みといえそうだ。

■変更履歴
当初、最終段落1行目に記載していた各ホテルの他ホテルへの送客に関する目標値は誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2011/11/25 12:15]