マンダムの八田学Eビジネス準備室室長
マンダムの八田学Eビジネス準備室室長
[画像のクリックで拡大表示]
ゲーム「FOCUS」の画面
ゲーム「FOCUS」の画面
[画像のクリックで拡大表示]

 男性化粧品大手のマンダムは10月21日、フェイスブックの英語版公式ページで髪型のアレンジをシミュレーションできるゲーム「FOCUS」の提供を始めた。11月8日時点で約1万人の利用者を集めている。

 同社の化粧品ブランド「ギャツビー」の欧米展開の可能性を探るためのキャンペーン施策の一環で、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)システムのクラウドサービスなどを手がけるシナジーマーケティングと共同で展開している。施策に先立ち、10月1日には社内にEビジネス準備室を新設した。同室が中心となって、欧米のフェイスブック利用者に対する認知度向上を図りつつ、ネット販売などの形で欧米市場に参入する余地がどの程度あるのかを探るという。

 施策を始めた理由について、マンダムの八田学Eビジネス準備室室長は「インターネットを通じて、欧米にもギャツビー愛好者が少なからず存在すると分かったため」と明かす。同社の海外展開はアジア地域が主体で、欧米市場にはほとんど手をつけていなかった。アジア系の方が、日本の顧客と髪質が近く、商品との相性が良いと考えていたからだ。

 ところが2010年9月、社内の研究所で働く女性社員から「ヘアスタイリング剤が欧米でも人気を集めている」という意外な情報が寄せられた。ネットなどで調査したところ、確かに潜在顧客が少なからずいることがうかがえた。

 例えば欧米人がギャツビーのスタイリング剤を使って髪型をアレンジした様子を収めた映像が、動画サイトのユーチューブに投稿されて100万回以上もの閲覧回数を記録していた。フェイスブック上には非公式の英語版ファンページが作られており、多数の利用者がブランドへの愛着を表す「いいね!」ボタンを押していた。しかもその多くは欧米在住者と見られる。ギャツビー愛好者のウェブページが欧米各国に存在することもわかった。

 実は同社のヘアスタイリング剤の1つである「ムービングラバー」シリーズは、どのような髪質にも使いやすい商品として開発した。この特徴が「日本製を好む欧米の人々に受け入れられたのではないか」と八田室長はみている。

効果を判断する指標はあえて設定しない

 今回のマンダムのようなキャンペーン施策を展開する場合、施策の成果を確認する指標を設定するのが一般的である。フェイスブックでは「いいね!」ボタンが押された数や、ゲームの利用者数、利用者が投稿したコメント数など定量的なデータも取得しやすい。だが八田室長は「この数値を達成すれば成功といった指標はあえて設定していない」と語る。

 「投稿されたコメントの内容など定性情報を参照し、当社が期待する行動を起こしてくれているかどうかを確認したい」(八田室長)。今後半年ほどの間に1~2回、新たなキャンペーン施策を展開する予定だが、それも利用者の反応を確認しながら、柔軟に内容を変えていく意向だ。ソーシャルメディアが果たして欧米展開を判断するツールとして機能するかどうか。その信頼性を見極めるのに役立つ事例とも言えそうだ。