アサヒグループホールディングスは2011年9月から、中国にある3つの営業拠点でクラウドコンピューティングを利用した顧客管理システムを本格的に使い始めた。BI(ビジネスインテリジェンス)システムと組み合わせて、現地の小売店や飲食店といった取引先別や商品別の実売実績を見える化し、営業施策の立案精度を高めている。

 今回、顧客管理システムを導入したのは、上海と深セン、大連の3拠点である。これらの拠点ではこれまで、商談や会議などの資料作成に1~3日もかかる場合があったが、これを3~5分にまで大幅に短縮できた。従来は表計算ソフトでデータを集計・加工するなどしていたが、現地ではこの作業に手間取っていたという。

 システム開発ではクラウドを採用したことで、開発コストと期間も個別開発に比べて、4分の1ほどに抑えられた。

 新システムは取引先別や商品別の実売実績を視覚的に見られる機能を備えている。例えば、ある取引先のビール販売が減っていれば、商品別の販売動向を確認して、「樽は伸びているが、瓶が減っているな」といった分析が素早くできる。さらに、営業担当者別の売上高や担当店舗数の推移をグラフ形式で表示可能だ。

 データは全て上海で管理しているが、3拠点の営業や企画、管理部門が収集・分析できるようにしている。年初の販売計画や営業戦略はもちろんのこと、焼酎キャンペーンなど期間限定で実施する企画の立案にも役立てられる。これまでは3拠点の業務フローやデータ形式がバラバラで、情報共有もできていなかった。

 他のシステムとのデータ連携機能はあえて実装しなかった。「商品マスターとの連携も考えられたが、現状では中国での品目数が20ほどしかないので実装しなかった」(アサヒマネジメントサービスの光延祐介業務システム部業務グループ担当課長)。

 新システムは米セールスフォース・ドットコムの「Force.com」と、富士通が取り扱うBIサービス「SAP BusinessObjects BI OnDemand」を組み合わせて開発した。システム構築は富士通が担当した。