写真1●POSレジと肌診断機を一体化した新しい店頭端末
写真1●POSレジと肌診断機を一体化した新しい店頭端末
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写真2●オンラインクルーがチャット形式で顧客にカウンセリングサービスを提供する
写真2●オンラインクルーがチャット形式で顧客にカウンセリングサービスを提供する
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 資生堂グループの化粧品販売会社であるイプサ(東京都港区)は2011年9月末までに、デパート内にあるカウンセリング店のPOS(販売時点情報管理)レジと肌診断機を一体化した新しい店頭端末を全78店に展開する(写真1)。独自開発した新端末の導入台数は、全店合計で約360台になる。

 肌起点のカウンセリングを強みとするイプサのクルー(美容部員)にとって、顧客の肌色やきめの細かさを診断できる機器類は接客に欠かせない道具である。ただ、これまでは診断機とPOSレジが別々だったので、顧客の診断結果と商品の購入結果を一元管理しにくかった。新端末ではこれまで手書きしていた顧客のカルテ情報を、ペン入力式で電子的に管理できるようになるうえ、実際の購買につながったかどうかまで分かる。

 イプサは店頭だけでなくオンライン販売も含めて、顧客一人ひとりを一元管理できる統合データベースの開発も同時並行で進めているところだ。統合データベースは2011年11月の稼働を予定している。稼働後は顧客がどの店舗を訪れても、情報を引き継いで接客できるようになる。これまでは店舗ごとに個別の顧客カルテを用意しており、店舗間で情報を共有できていなかった。

 この1年、イプサは通販サイトを刷新するなどオンライン販売にも精力的に取り組んできた経緯がある。堀利理代表取締役社長は「オンライン販売は前期比で30%以上伸びた」と明かす。もっとも、それ以上に「これまで当社が出会えていなかった新しいお客様を獲得できたことが大きい。こうしたお客様が店頭にも来ていただけるようになることで生まれる相乗効果に期待している」(堀社長)。新しい店頭端末や統合データベースはそのためのインフラ作りといえる。

 オンライン販売では、店頭で培ってきた自社の強みを前面に打ち出そうと考えた。そこで2010年夏からは日本の化粧品会社としては初めて、チャット形式のオンラインカウンセリングサービスを提供し始めた。接客経験が長いクルーを専任で常時2~3人、オンラインクルーとして本社に待機させている(写真2)。

 今では毎月100~250件ほどオンラインで相談が来る。平均すると1件当たり15分ほど、オンラインクルーが顧客とチャットで会話している状態だ。その結果、「今度近くの店舗に行ってみます」と言ってくれる顧客も現れており、反応は上々だという。