写真●今野製作所の今野浩好社長
写真●今野製作所の今野浩好社長
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 金属爪をすき間に差し込んで対象物を持ち上げる「油圧爪つきジャッキ」が主力の今野製作所(東京都足立区)が、2011年6月に導入した顧客案件の進捗管理システムで成果を上げ出した。「顧客から注文を受けてから製品を納めるまでのリードタイムを従来よりも1~2割短縮できた」と、今野製作所の今野浩好代表取締役社長は語る。

 今野社長がこのシステムの最大の特徴と強調するのが、受注品の案件管理機能だ。営業部門と技術部門のそれぞれについて、案件の進捗を各プロセスごとに把握する機能を備えている。例えば営業部門のメニューであれば、「顧客案件の受領」「顧客チャネルと与信管理」「納期、数量、コスト等の要望」「お客さまの要望」といった具合に、営業担当者が必要な情報を段階を追って把握できるように設計している。お客様の要望を一例に挙げれば、製品を使う場所や購入の目的、現状の不満などを一元管理できるようにした。

 さらに、営業担当者が案件のステータスを「未着手」から「依頼中」に切り替えるだけで、提案仕様書の作成依頼メールが自動的に技術部門に飛ぶ。これまでは営業担当者がそのつどメールや紙で、技術部門に提案仕様書の作成を頼んでいた。「国内3カ所に分散する拠点間で情報のやり取りがうまくいかず、時間がかかるケースがあった」(今野社長)。

 だが同システムの導入で「たとえ経験の浅い若手社員であっても、顧客から何を聞き出さなければならないかがあらかじめ分かるので、再確認や手戻りといった事態を減らせている」(今野社長)。既にリードタイムを1~2割削減できた今は、顧客から注文を受けてから製品を納めるまでに平均で1カ月半ほどかかっている。これを1年後には従来比で半減させる目標を掲げている。

 サイボウズのウェブデータベース「デヂエ」を使って構築したこの案件進捗管理システムは、今野製作所が2010年7月から進める「業務の見える化プロジェクト」の一環という位置付けだ。同社はプロセス参照モデル「SCOR(サプライチェーン・オペレーションズ・リファレンスモデル)」を使い、営業や技術、生産管理など各部門ごとに一定のルールに沿って業務プロセスを記述。どのプロセスにどういった無駄が潜んでいるかをあぶり出し、改善に生かしていた経緯がある。その成果が今回のシステムに盛り込まれているという。