ポイントはここ!

●紙のカタログや資料をなくしてiPadで閲覧、現場の機動力をアップ

●社内ネットワークへの不正アクセスを危惧し、ネットワークを論理的に分割

 文具大手のコクヨは2010年9月、グループ全体でiPadを導入し、運用し始めた。オフィス家具のコクヨファニチャーで90台、文具のコクヨS&Tで49台、オフィス用具の通販を手掛けるカウネットで53台など、全社で約250台のiPadを利用している。特徴は、展示場など接客の現場、営業の外出先、会議室など様々な場面で活用し、ペーパーレス化を進めている点だ。

 導入のきっかけは、「オフィス環境を売っているコクヨとしては、iPadのようなツールを使って、自ら働き方を変えていかなければならない」という社長の言葉だった。

 コクヨはもともと、文具やオフィス家具の単品を販売するだけでなく、便利なオフィス空間とそこでのワークスタイルの提案を目指している。そのために、常に先立って自社のオフィス空間を進化させてきた。例えばIP電話、無線LAN、ノートパソコンによる社内でのモビリティー確保、無線LANを搭載したデュアル端末、iPhone導入と、様々なことを試みている。iPad活用も、同様に便利な業務環境を生み出すための手段である。

 「そんな働き方ができるならコクヨの話を聞いてみたい、そう思ってもらえるようなシーンを考えてほしい」。社長の言葉を受けて、早速、コクヨグループのIT化を担当するコクヨビジネスサービスを中心に検討を開始。グループ横断のチームを組織し、プロジェクトをスタートさせた。

紙なしでコスト減、機動力アップ

 オフィス環境を変え、働き方を変えるために、iPadをどのように活用できるか。それぞれの事業会社で、現場にフィットする使い方を想定し、2011年9月から12月にかけて、順次、iPadを活用し始めた。iPadは第3世代携帯電話(3G)と無線LANの両方の通信機能を備えたモデルである。

 用途は大別して3種類(図1)。(1)会議での資料閲覧用の端末、(2)カタログや提案資料などのプレゼンテーション用端末、(3)外出先から利用する仮想デスクトップ─である。このうちペーパーレス化の効果があるのは(1)と(2)。コクヨビジネスサービスITソリューション部ユーザーサポートグループの小貫 直之氏は、「デジタル化したことによる機動性向上などの効果も大きい」という。

図1●コクヨは様々な目的でiPadを利用している<br>役員会議、カタログや提案資料のビューア、仮想デスクトップ端末などの用途で活用。仮想デスクトップ以外の用途ではペーパーレス化の効果が得られている。
図1●コクヨは様々な目的でiPadを利用している
役員会議、カタログや提案資料のビューア、仮想デスクトップ端末などの用途で活用。仮想デスクトップ以外の用途ではペーパーレス化の効果が得られている。
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 (1)は、持ち株会社や事業会社で週に1回程度の頻度で開かれる役員会議で、資料閲覧用の端末として使う。システムとしてはインフォテリアの情報配信用アプリケーション「Handbook」を採用した。

 具体的には、会議資料をPDF化して、HandbookサーバーからiPadに一斉配信している。過去の資料を随時呼び出せるし、資料データへのアクセス制御も手軽。会議終了後は端末からデータを自動的に削除するため、流出する心配もない。