日本マクドナルドでは、東日本大震災を機に在宅勤務制度を利用する社員が急増している。2011年6月末時点で、震災前と比べて利用者は1.5倍の約300人になった。本社勤務する社員の6割が、少なくとも週に1~2回は在宅勤務を利用している。今夏の電力不足への懸念を受け、同社は本社の電力使用量を従来よりも25%削減する目標を掲げている。在宅勤務は目標達成に向けた施策の1つと位置づけている。

 対象は、管理職を含めて本社に勤務する約500人のうち、自宅では業務を進めづらい一部の部門を除く全員。「自宅にインターネットの接続環境が整っている」「机やいすといった備品がそろっている」などの条件を満たせば、同制度を利用できる。自宅での作業環境を整えるために購入した備品などの費用は、原則として会社が負担する。

 社員は在宅勤務の利用を申請すると、まず2~3時間のオリエンテーションを受ける。そこで在宅勤務をするうえでの注意点を聞いたり、自宅に持ち帰る社用パソコンにウェブ会議ソフトをインストールしたりする。

 同社が在宅勤務を導入したのは、2009年10月だ。当初は100人規模で始め、震災前までに利用者は約200人まで増えていた。「在宅勤務の導入で、日中どういう働き方をすれば仕事の効率が上がるかを考えるきっかけをつかもうとした」(日本マクドナルド)。

 実際に在宅勤務を利用する山本美和広報担当マネージャーアソシエイトは「自宅では書類作成など1人で進められる作業を集中してこなす。全体として業務効率は上がっている」と話す。山本氏は育児をきっかけに、2010年4月に在宅勤務の利用を申請。以来、週1回ほど自宅で仕事をこなしている。

 在宅勤務をする際は、事前に部署内にその旨を口頭やメールで周知したうえ、スケジュール管理ソフトに自宅での作業内容をできるだけ詳細に書き込む。申請書を提出するなどの面倒な手続きは必要ないため、「使いやすい」(山本氏)という。在宅勤務を申請した社員のほとんどが同制度を活用しており、週3~4回の頻度で利用している社員もいる。

 同社は2~3カ月に一度、アンケートを実施し、在宅勤務の利用者が抱く不満を吸い上げ、改善につなげている。在宅勤務の利用者を対象に自社内の成功例をメールマガジンで配信し、利用促進につなげる施策も打っている。