写真1●オンライン販売限定商品「ルックダックおふろの洗剤」のデザイン検討プロセスをマッピングした例。サイズやデザインを変更しながら最終案に絞り込む過程を追える
写真1●オンライン販売限定商品「ルックダックおふろの洗剤」のデザイン検討プロセスをマッピングした例。サイズやデザインを変更しながら最終案に絞り込む過程を追える
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写真2●以前から利用していた管理用のデータベース。ここから画像情報をマッピングソフトに取り込める
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 ライオンの研究開発本部包装技術研究所は、洗剤など日用品の商品パッケージを設計するプロセスに、マインドマップ状のマッピングソフトを活用している。2011年4月から同研究所の設計解析センターで利用を始めた。設計過程で生まれたアイデアや、意思決定のプロセスをビジュアルで記録に残すことで、採用しなかったアイデアを別のパッケージ開発に生かしたり、エンジニアの発想を刺激したりする効果を狙う。チェンジビジョン(東京都台東区)が提供するマッピングソフト「astah* think!(アスターシンク)」を採用した。

 同センターでは、マーケティング部門で作成した新商品のデザイン図を基に、担当チームがデザインや持ちやすさ、強度などを検討して、3次元CAD(コンピュータによる設計)データや樹脂模型などを作成。チームで議論しながら最終案を絞り込んでいく。こうしたプロセスをastah* think!に記録して、試行錯誤の経過が分かるようにしておく(写真1)。枝を分岐させて階層状に広げたうえに各デザインの画像や情報を貼り付けていくことで、複数のデザインの関連が分かるように整理できる。

 例えばあるデザイン(A案)を基に、強度や持ちやすさを変更した模型を作成した場合には、A案から派生した枝の上にそれらの模型の画像を貼り付け、途中で違うデザインが出てくると枝を分岐させる。別のデザイン(B案)から派生したデザインも同様に枝上に貼り付けていく。チームでの議論で出た意見をマップ内に書き留めておくことで、どのデザインがどのような点で評価されたか、またはどのような課題があって採用されなかったかといった経緯を、デザインの画像と対比させながら残せるようにする。

 同センターでは以前から、CADデータや試作品などの中間成果物を登録するデータベースを活用し、情報を共有してきた(写真2)。しかし「どの案からどの案が派生した」といった相互の関係が分かりにくいうえ、絞り込むプロセスを記録できなかった。その結果「最終的に採用された案以外のデザインを、後日別の商品に活用することが難しかった」と設計解析センターの中川敦仁主任研究員は説明する。

 マインドマップ形式で記録することで、担当者の発想を刺激する狙いもある。複数のデザイン案をマップ上で整理していくと、「1つの枝だけにアイデアが集中し、他の枝が広がっていない」といった偏りが見えるようになる。同センターでは3次元CADや樹脂模型を作成する3次元プリント装置を導入し、短時間で様々なデザインを形にできる環境を作っている。このメリットを生かせば、従来の発想と違う思い切ったデザインにも取り組めるはずだが、往々にして最初に作ったデザインに固執してしまいがちだった。「マップ化することで発想の偏りを見える化し、自由な発想を促したい」と中川主任研究員は話す。