写真●スマートフォンで車検証のQRコードを撮影する
写真●スマートフォンで車検証のQRコードを撮影する
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 中古車チェーン大手のカーセブンディベロプメント(東京都中央区)は2011年4月、スマートフォンを利用した中古車査定の新システムを稼働させた。電話やファクス、電子メールを使った従来の方法と比べ、査定時間を3~4割短縮できる。当初は直営店のみで導入していたが、6月から全100店舗のフランチャイズチェーン(FC)店などに順次展開している。

 新システム「インスマートシステム」は、買い取り店舗に持ち込まれた車の車検証に印刷された5つのQRコードを、スマートフォンが備えるカメラで撮影することで、車種や型式、生産日といった中古車の基本情報を読み込む(写真)。営業スタッフがこの情報を、店長や本部のプライシングセンターなどに送信する。店長はこの情報をパソコン上で確認して価格を決定するが、店長が判断に迷う場合には、プライシングセンターなどで査定して店長に買い取り価格を推奨する。

 従来は店長が買い取り価格の判断に迷うと、車種などの情報を専用の買い取り査定フォーマットに記入し、プライシングセンターなどにファクスで送信。さらに補足情報を電話で伝えるなどし、判断を仰いでいた。「新システムの導入で、情報を紙に起こしたり、ファクスを送ったりといった収益を生まない作業をしなくて済む」。井上貴之代表取締役社長はこう語る。さらに「スマートフォンの画面上の指示に従えば、必要な情報を漏れなく入力できるため、補足の電話も減らせる」と続ける。

 新システムには、直営店やFC店だけでなく、整備工場などからの買い取りを増やす狙いもある。整備工場も古物商許可を取得すれば中古車売買が可能だが、適切な査定ノウハウがないため売買ビジネスに積極的に取り組んでいない工場も多い。カーセブンのシステムを使えば、持ち込まれた中古車のQRコード情報を同社のプライシングセンターなどに送って査定してもらえるので、中古車の査定ノウハウを持たない整備工場などでも中古車買い取り業務がやりやすくなる。

 カーセブンでは中古車買い取りの裾野を広げて在庫を充実させることで、買い取りから販売まで一括して行う体制の確立を目指している。中古車の売買は業者専門のオークションサイトを経由するのが一般的だが、出品料や成約・落札料がかかる。自社ネットワーク内で取引を完結することで利幅の拡大が見込めるからだ。

 「現在、オークションサイトを経由して売買される中古車の数は業界全体で年間約300万台だが、3~4年以内にはその1割に相当する30万台ほどを当社のネットワークで扱い、新たな仕組みで売買したい」(井上社長)。カーセブンは新システムの開発に2000万円ほどを投じた。今後も投資を継続する予定で、業務システムとのデータ連携機能などを盛り込みたいとする。