タクシー配車アプリを搭載したiPhoneとAndroid端末を手に持つ日本交通の川鍋一朗社長(写真撮影:北山宏一)
タクシー配車アプリを搭載したiPhoneとAndroid端末を手に持つ日本交通の川鍋一朗社長(写真撮影:北山宏一)
[画像のクリックで拡大表示]

 東京のタクシー最大手である日本交通(東京都北区)の川鍋一朗代表取締役社長は、iPhoneからタクシーを呼び出せるGPS対応のアプリケーション「タクシー配車アプリ」による配車実績が、提供を開始した2011年1月18日から同年3月上旬までに、1500件を超えたことを明らかにした。この件数は、日本交通における月間のデジタルGPS無線配車件数である15万件の1%に相当する。川鍋社長は「開始から2カ月足らずで1%のタクシー配車需要を掘り起こせたインパクトは大きい」と、タクシー配車アプリに期待を寄せる。

 2011年2月22日にはAndroid端末向けのタクシー配車アプリも提供を開始した。同3月上旬までにiPhone向けで4万7000件以上のダウンロード実績があり、同じ時期までにAndroid端末向けではiPhoneの10分の1ほどである4500件以上のダウンロードがあった。合計で約5万件のダウンロードが既にあったことになる。

 配車アプリは、スマートフォン上に表示される地図から自分の居場所を特定し、電話をかけずにGPSでタクシーを呼べる手軽さが評判になっている。タクシーを呼んだ顧客に一番近いタクシーを、同社の3200台走るタクシーからデジタルGPS無線配車システムで見つけ出して配車するので、顧客の待ち時間は最短で済む。

 川鍋社長がツイッターで配車アプリのことをつぶやくと、ダウンロード件数が伸びることから、「当社としては初めてSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の力を目の当たりにした事例でもある。タクシー配車というリアルの行為とスマートフォンのアプリというバーチャルの組み合わせがお客様には受けているようだ」(川鍋社長)。

 日本交通が配車アプリの開発に着手したのは2010年8月のこと。指定された場所に宅配ピザを届けるサービスに川鍋社長がヒントを得て、配車アプリの自社開発を始めた経緯がある。川鍋社長を含む社内の15人ほどでiPhoneプロジェクトを結成し、どんなサービスが求められるのか検討を進めてきた。その結果、まずは無線配車の大半を占めるタクシー1台のピンポイント配車に的を絞って開発することにした。

 川鍋社長は「配車アプリの応用範囲は広く、これから色々なことを試していきたい」と話す。例えば、利用者が実際に乗ったタクシーの評価を書き込んだり、お気に入りの運転者を指名して配車したりすることが考えられる。日本交通は社員が顧客になり代わってタクシーに乗り込み、サービスレベルをチェックする覆面調査を実施しているが、この結果に実際にタクシーに乗った顧客の声を加えていくことも考えている。「まずは運転手のモチベーションを高めるため、お褒めの言葉だけでもいち早く本人にフィードバックすることから考えたい」(川鍋社長)。配車アプリがサービスレベルの改善にも寄与する可能性が出てきた。

■変更履歴
サブタイトルおよび本文2文目にあった「年間」は「月間」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2011/03/10 18:20]