写真1●四季が導入したチケットレスシステムの利用風景。入場カウンターに埋め込んだバーコードリーダーに携帯電話に表示させた2次元バーコードを読み取らせる
写真1●四季が導入したチケットレスシステムの利用風景。入場カウンターに埋め込んだバーコードリーダーに携帯電話に表示させた2次元バーコードを読み取らせる
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写真2●劇団四季のホームページ。東京周辺からアクセスした場合、東京で上演予定の演目を自動表示。劇団四季idでログイン後は顧客別の画面になる
写真2●劇団四季のホームページ。東京周辺からアクセスした場合、東京で上演予定の演目を自動表示。劇団四季idでログイン後は顧客別の画面になる
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 ミュージカルなどの演劇を上演する「劇団四季」を運営する四季(横浜市)は、2011年4月末までに新しいCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)戦略である「劇団四季ウェブプラン2010」の施策実行を完了させる。インターネットを通じて、顧客別に演目の告知からチケット販売までを完結できるようにし、チケット流通の円滑化や顧客への適切な情報提供による販促を狙う。

 劇場側の施策として、2011年4月末までに直営専用劇場全8カ所でチケットレス入場システム導入を完了させる。既に2010年7月に新規開業した「四季劇場[夏]」(東京都品川区)で試験導入(写真1)。順次、導入劇場を増やしてきた。

 利用者が劇団四季のホームページで新設したネット会員制度「劇団四季id」に登録すると、チケットレス入場できる「スマートチケット」を購入できる。購入後、携帯電話にチケット情報を含む2次元バーコードをダウンロードし、当日劇場の入場ゲートで画面を表示してかざせば入場できる。

 吉田智誉樹・取締役広報宣伝担当はネット会員制度を導入した理由を、「本当に四季の公演を見たい人にチケットを行き渡らせるのが大きな狙いだ」と説明する。現状では、休日の人気演目はチケットが取りにくく、ネットオークションにおける高値での転売が横行して常連客の不満につながっていた。チケットレス方式ではオークションなどでの転売を禁止する代わりに、予約後に都合が悪くなった人向けに四季が仲介する新たな転売制度を導入。他の会員がネット上でキャンセルチケットを購入できるようにした。

 既に導入している劇場でのチケットレス利用率は15%程度だが、最終的には5割まで高めることを目指す。

顧客ID軸にミュージカル以外の需要も掘り起こす

 並行して、会員情報を活用したサービス拡充も進めている。2010年7月にスタートした新しいホームページでは、ログイン前にアクセス元の地域を識別し、その地域で現在上演中・上演予定の演目を表示する(写真2)。劇団四季idでログインした後は、さらに年代・性別や過去の観劇履歴・ホームページの閲覧履歴に応じて、演目やメッセージを詳しく表示する。

 この狙いは、人気の高い休日のミュージカル公演以外のチケット販売を強化することだ。平日公演や、ミュージカルに比べてファン層が限られるストレートプレイ(ミュージカル以外の演劇)の公演では、比較的座席に余裕がある。そこで会員情報を活用して適切な情報提供を行うことで、需要を増やせるとみている。具体的には、過去にストレートプレイの観劇履歴や、ホームページ上にある専門家の演劇批評の閲覧履歴などがある会員には、ストレートプレイの演目を積極的に告知し、ファン層の掘り起こしを目指す。

 一連のネット戦略の企画・実行はウェブコンサルティング会社のクリエイティブホープ(東京都新宿区)が支援した。