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業種 昭和電工
ロス削減を全員参加で10年継続、設備故障の発生件数を60分の1に

2010/12/09
島津 忠承=日経情報ストラテジー (筆者執筆記事一覧
出典:日経情報ストラテジー 2009年11月号pp.128-131
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

昭和電工の川崎事業所は1999年からTPM(全員参加の生産保全)活動を開始し、10年間で設備故障の発生件数を60分の1に減らした。2005年まで全部門で基礎を徹底。2006年からは課単位の重点課題解決に活動の重点を移し、製造課だけで3年間で23億円のコスト削減効果を上げた。

 昭和電工の川崎事業所は1931年に国産のアンモニア合成技術を利用してのアンモニア製造を国内で初めて成功させるなど、同社のシンボル的な存在の生産拠点である。同事業所は2008年、日本プラントメンテナンス協会の「TPM(全員参加の生産保全)特別賞」を受賞した。

 TPMは、ロスのゼロを目指して生産現場の改善活動に継続的に取り組むためのマネジメント手法である。TPM特別賞を2008年に受賞できたのは川崎事業所を含めて国内で4事業所だけであり、このTPMの活動が国内有数のレベルであると認められた証といってよい。同賞は「TPM活動を長年継続し、特徴ある画期的な活動をしたと認められた事業所」を選定して表彰するとしている。

●昭和電工川崎事業所は課題解決型のTPMに取り組み、製造課だけでも3年間で23億円のコストを削減した
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 化学品事業部門の福山幸男川崎事業所長は「活動を地道に継続する仕組みを整えた点や、中期経営計画などの経営側の意思を反映した活動になっている点が評価された」と胸を張る。

 実際に同事業所はTPM活動で成果を上げてきた。設備故障の発生件数は活動開始前の1998年と比べて2008年は約60分の1に減った。

3~4年ごとのステップでレベルを上げる

 川崎事業所がTPM活動を開始したのは1999年。当時の川崎事業所は頻発する設備故障に苦しんでいた。このため当時の森田正治工場長が、現場力を鍛え直す手段としてTPMを採用した。

 TPM活動の中心は、生産活動に直接携わる作業者一人ひとりが自らの設備を保全する「自主保全活動」である。自主保全活動は(1)初期清掃、(2)発生源・困難個所対策、(3)仮基準書の作成、(4)総点検、(5)自主点検、(6)標準化、(7)自主管理という7段階のステップで進める。

●TPM活動を根付かせるための職制ごとの主な施策
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 活動には“三種の神器”を使う。小集団の活動方針や進ちょくを一目で確認できる「活動板」、改善活動の要点をまとめる「ワンポイントレッスン」、小集団のメンバー同士が活動板を確認しながら改善テーマなどを話し合う「ミーティング」だ。このほかにもTPMでは、ロスの原因を探る「なぜなぜ分析」や、トップが現場の成果を判定し、今後の活動の方向性などを助言する「トップ診断」など、改善活動を促進する様々な手法を体系づけてある。

 川崎事業所がTPM活動を10年もの間、忠実に継続できた裏には3つの工夫があった。(1)3~4年を1つの活動期間と決め、その時期に応じた目標を設定する、(2)課長が課の戦略目標「あるべき姿」を立案できるように訓練を施す、(3)部長クラスのトップ診断を通じて、現場の活動のPDCA(計画・実行・検証・見直し)サイクルを着実に回す──だ。

 まず(1)の活動目標の設定については、第1期の1999~2002年では「自主保全活動の第4ステップの『総点検』まで進む」を目指した。主な課題は、発生した故障の再発防止である。

 具体的には、現場の作業者に担当する設備の保全責任を持たせ、設備の清掃点検を通じて不具合を発見させる活動などに取り組んだ。不具合に適切な対策を打てた場合は、ワンポイントレッスンに要点をまとめ、小集団内でノウハウを共有した。

 活動初期は、製造部長などが進ちょく目標をトップダウンで決めて各現場に実行させた。当時の大半の現場ではやらされ感が強かったため、多少強引に活動を進め、「何らかの効果を出して納得してもらおうとした」(福山事業所長)。半年ほど経過すると小規模なトラブルが減少し始め、効果に納得する作業者の数が少しずつ増えていった。

 2001年からは、日本プラントメンテナンス協会が主催する「からくり改善くふう展」に現場作業者の代表者を6年連続で送り込んだ。この展示会は、現場発案の低コストの作業改善を披露するもの。現場作業者たちは当初は尻込みしていたが、いざ参加すると展示会で他社の担当者から質問攻めに遭って姿勢が前向きになった。自分たちの活動が認められたと感じたのだ。川崎事業所は参加した6年間、必ず何らかの表彰を受けた。

 続く2003~2005年の第2期は、自主保全活動の第5ステップである「自主点検」の活動に力を入れた。引き続き、発生した故障の再発を防止するとともに、第1期には小集団内にとどまっていた改善活動の成果を横展開することを課題に据えた。発生した故障への対策だけでなく、故障発生を未然に防ぐ「気がかり点潰し」などの作業も追加した。これらを徹底した結果、設備故障の発生件数は1998年の14分の1まで減った。

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