ポイントはここ!

●Gmailの採用で初期コストを抑えてメールシステムを刷新

●外部のASPサービスと連携させ、標準にはない認証やID管理機能を実現

 衛生用品メーカーの大手であるユニ・チャームは、2009年にITインフラを刷新した。その内容は大きく二つに分けられる。(1)クラウド型サービスを利用したメールシステムの刷新、(2)IP-VPNからインターネットVPNへの切り替え---である。

 (1)は、自社でサーバーを立てて運用していたメールシステムを廃止し、米グーグルのメールサービス「Gmail」を採用した。これにより初期費用を抑えてメールシステムを刷新でき、運用コストを大幅に低減できるという。

 特徴的なのは、Gmailを利用する際のユーザー認証などの仕組みに、外部のサービスを組み合わせた点。企業が自社システム構築にクラウドサービスを採用する際のセキュリティ強化法として、注目度が高まってきている取り組みだ。

 (2)は、速度の向上とコストの低減が目的である。ブロードバンド回線はベストエフォートで帯域の保証はないが、IP-VPNの回線速度128k~256kビット/秒に比べれば、大幅な速度向上となる。

アクセスとISPを完全2重化

 インターネットVPNへの全面切り替えは2009年10月に実施した。構築ベンダーは1社だが、利用するアクセス回線とインターネット接続事業者(ISP)は各拠点で異なっている。各拠点と対向となるデータセンターにVPNルーターを置き、IPsecを使ってVPNトンネルを張っている(図1)。

図1●ユニ・チャームのネットワーク構成<br>従来自社で運用していたメール・サーバーを廃止し、Gmailに切り替えた。また、拠点の接続をIP-VPNからインターネットに切り替えた。図では省略したが、海外拠点はIDCを経由してIP-VPNで接続している。
図1●ユニ・チャームのネットワーク構成
従来自社で運用していたメール・サーバーを廃止し、Gmailに切り替えた。また、拠点の接続をIP-VPNからインターネットに切り替えた。図では省略したが、海外拠点はIDCを経由してIP-VPNで接続している。
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 同社が構築したインターネットVPNの特徴は、アクセス回線とISPの両方をすべての拠点で2重化している点。アクセス回線の一方をBフレッツ、もう一方を電力系サービスといった具合に、それぞれの事業者も変えている。こうすることで、冗長化の効果をより高めている。同じ狙いで、ISPも拠点ごとに異なる2社を採用している。