キヤノン子会社でレーザープリンターなどを生産する長浜キヤノン(滋賀県長浜市)が、TOC(制約条件の理論)を応用した調達改革に取り組んでいることが明らかになった。TOCは『ザ・ゴール』(ダイヤモンド社)の著作でも知られるエリヤフ・ゴールドラット氏が体系化した現場改革手法。

 2005年から長浜キヤノンでは取引先の生産現場の改善を支援する「Fプロジェクト」を始めていたが、2009年4月からTOCのの生産管理手法であるドラム・バッファー・ロープ(DBR)を採用。出荷リードタイムや納期順守率の改善を目指している。取引先13社もこの活動に取り組んでいる。取引先のコスト競争力を高めることで、最終的に調達コストの低減につなげる狙いだ。

 DBRは、生産ライン全体のボトルネックとなっている工程を特定し、このボトルネック工程に前後の工程を同期させつつ、ボトルネック工程の生産性改善に取り組む手法。工程別にばらばらに改善するよりも生産性向上効果が大きく、リードタイム短縮や仕掛かり在庫削減も進みやすいことが特徴だ。Fプロジェクトに参加したあるメーカーは、改善対象に設定した部品を生産するラインのリードタイムが平均20日から同13日に、最も長い製品でも同44日から22日へと大幅に改善した。

 長浜キヤノン自身も物流体制を見直すなどして、在庫の削減に努めている。「他社に改善を要求するからには、まずは自社の現場を改善しなければならない」(西嶋課長)との考えからだ。

 一連の改善活動では、TOCのコンサルティング会社であるゴール・システム・コンサルティングの普天間敏コンサルタントが、長浜キヤノンと取引先の双方で指導に当たっている。「当社と取引先が同じコンサルタントから厳しい指導を受けることで、互いに緊張感を持って改善活動に取り組める」と北島部長は語る。Fプロジェクトに参加している取引先の中には、長浜キヤノンがFプロジェクトで掲げるスローガン「調達革新・長浜宣言」の一部を社訓に盛り込んだ企業もあるという。