ポイントはここ!

●店舗の回線を全面的に入れ替え,都心部の店舗でUQ WiMAXを導入

●ストア・コントローラを集約,売り上げ情報をリアルタイム収集

 JR東日本の駅構内にあるコンビニエンスストアの「NEWDAYS」や売店の「KIOSK」を運営するJR東日本リテールネットは2009年8月,各店舗を結ぶネットワークを刷新した。各店舗からの販売データをリアルタイムで集約できる新情報システム「RICSS」(Retailnet Information Competition Strategy System)の構築に伴う刷新である。特徴は,東京都と近郊の89店舗に高速無線通信のモバイルWiMAXを採用した点だ。

販売情報の集約に問題点

 同社では,NEWDAYS500店舗到達の推進といった方針を含む中期アクションプログラム「J-リテールブレークスルー2010(考動~成長)」を2009年1月に定めた。最大の狙いは顧客満足度の向上。そこで,2007年末から検討を進めてきたRICSS構築を,同プログラムの柱に位置付けた。

 「RICSSを立ち上げることで“エキナカ”という特殊な形態の店舗における独自のマーケティング,品ぞろえの管理,運営の効率化,商品開発などの方法を確立することを目指した」(山本信也 取締役経営企画部長)。そこで同社は,店舗の売り上げ情報などをリアルタイムに収集することをRICSSのシステム要件に盛り込んだ。

 RICCSを導入する前は,販売データの分析に時間と手間がかかり,利用客が求める商品をタイムリーに提供しづらいという問題を抱えていた。

 NEWDAYSの各店舗では,品ぞろえの参考となる大量の販売データを,各店舗のサーバー(ストア・コントローラ)に記録していた。本来なら,これを本部に集めれば売れ筋などを分析できる。

 ところが,アクセス回線の帯域が十分でなかったため,夜間の時間帯を使っても膨大なデータを送信し切れなかった。そこで各店舗の膨大な売れ筋情報を分析するために,各店の管理者がストア・コントローラ内の情報をUSBメモリーに記録し,本社に提出していたが,この方法では分析のまとめに約1カ月かかる。情報が古すぎて,適切な店舗運営に結び付かないという状況に陥っていた。

 そこでJR東日本リテールネットはRICSSで,店舗ごとに設置していたストア・コントローラを廃して,その機能をデータ・センターのサーバーに集約。各店舗からデータ・センター(DC)のサーバーに直接接続する構成とした。同様にサーバーから店舗端末に対しては,商品情報などの大容量データを配信する。こうすることで,各店舗の機器導入コストや運用の手間も削減できると考えた(図1)。

図1●売れ筋情報をリアルタイムで把握する新情報システムを構築<br>従来は売れ筋情報を店舗内のサーバー(ストア・コントローラ)に記録していたが,刷新後はデータ・センターのサーバーに集約して多角的に分析できるようにした。同時に店舗を接続する網は従来のISDNからUQ WiMAXあるいはフレッツ・ADSLに切り替えた。
図1●売れ筋情報をリアルタイムで把握する新情報システムを構築
従来は売れ筋情報を店舗内のサーバー(ストア・コントローラ)に記録していたが,刷新後はデータ・センターのサーバーに集約して多角的に分析できるようにした。同時に店舗を接続する網は従来のISDNからUQ WiMAXあるいはフレッツ・ADSLに切り替えた。
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