「瞬足」を手にするシューズ事業部商品企画開発部の津端裕部長
「瞬足」を手にするシューズ事業部商品企画開発部の津端裕部長
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 2003年から販売しているアキレスの子ども用運動靴「瞬足」シリーズの販売数が2010年1月末で2000万足を超えた。「2008年度の販売数は544万足、2009年度は600万足の見通し。3~11歳の人口はおよそ1000万人なので単純計算で世代普及率は5割」(同社)という大ヒット商品だ。靴裏を左右非対称とし、左足外側と右足内側に滑り止めを付けて、左回りのコーナーを走りやすくした特徴が受け入れられている。

 今後はデータや科学研究に基づく商品改良を強化する方針。2009年4月、陸上競技の選手や指導者を多数輩出している順天堂大学と産学協同研究プロジェクトを開始した。イベントなどを通じて子どもたちの運動能力や、瞬足の機能に関するデータを収集し、商品開発に生かしていく予定だ。イベントの第1弾として同年8月には同大学スポーツ健康科学部の柳谷登志雄准教授らと都内の小学校で陸上教室を開催した。瞬足の商品サイトで募集した小学生200人が参加して、現役陸上選手の指導を受けた。

 そんなヒット商品の開発のヒントになったのは、文化人類学のフィールドワーク手法である「エスノグラフィー関連記事)」的な観察だったという。エスノグラフィーとは異文化を理解するために長い期間をかけて観察したりインタビューしたりする定性調査のことを指す。

 同社のシューズ事業は1990年代後半、相次ぐ逆風に見舞われていた。少子化の影響に加え、ナイキジャパン(東京都品川区)やアディダスジャパン(東京都新宿区)といった外資系大手スポーツメーカーがブランド力とデザイン性に優れた新製品を次々に投入。そのうえスーパーが独自のPB(プライベートブランド)を手がけるようになり、値下げ圧力がかかっていた。