ポイントはここ!

●ホールのスイッチにPoEで給電し,電源ケーブル敷設の手間とコストを省いた

●ループ接続による障害を防ぐためスイッチの「ループ・ガード機能」を利用

 東京ビッグサイトは,同社が運営・管理する「東京国際展示場」(東京ビッグサイト)を利用する主催者向けとして,新しいネットワークを構築し,テスト運用を続けている。設計のポイントは,展示場特有の課題を解決することだ。展示場のホールには多数の出展者のブースが並ぶため,それらを収容するには十分な帯域とポート数を確保しなければならない。数多くの末端スイッチの電源を確保したり,出展者によるループ接続の問題に備える必要もある。

各棟をギガの光ファイバで接続

 東京ビッグサイトの刷新前のネットワークは,10BASE5や10BASE-T,ATM-LANといった古い技術をベースとしており,主催者の要望に応えられるものではなかった。そこで主催者は展示会を開くたびに,その都度自分で機材を持ち込み,LANやインターネット接続を用意していた。

 一方,東京ビッグサイト自身が主催する「日本国際工作機械見本市」(JIMTOF)で,ICタグによる入場者管理を導入したいという思いもあった。従来のネットワークではそのための設備(各ブースに置くリーダーなど)を収容するポート数も帯域も足りなかったため,新しいネットワーク・インフラが必要だった。こうしたことから同社は,2006年にネットワーク刷新の検討を開始。2008年11月に稼働させた。

 導入したルーター,レイヤー3スイッチやレイヤー2スイッチはほとんどがアライドテレシスの製品である。メーカーの担当者が直接出向いて対応するというサポート体制を評価して選んだ。

 展示場の各ホールや会議室を結ぶネットワークを束ねるメイン・スイッチには,多数のブースに十分な帯域を提供する。このため,1台でギガビット・イーサネットを最大96ポート収容できる「SwitchBlade x908」を採用した(図1)。

図1●東京ビッグサイトのネットワーク構成図<br>MDF室に置いた2台のメイン・スイッチで,東西展示棟および会議棟のスイッチを束ねている。展示ホールの末端では,電源ケーブルの敷設の手間とコストを省くため,PoE対応スイッチを導入した。
図1●東京ビッグサイトのネットワーク構成図
MDF室に置いた2台のメイン・スイッチで,東西展示棟および会議棟のスイッチを束ねている。展示ホールの末端では,電源ケーブルの敷設の手間とコストを省くため,PoE対応スイッチを導入した。
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 メイン・スイッチは会議棟1階のMDF(主配線盤)室に置かれており,会議棟の別のフロアや100m以上離れた展示棟の各ホールとは光ファイバを使って接続している。同じ会議棟1階にある会議室までの距離は100m以内なので,メタルのUTPを使って接続している。

 さらにメイン・スイッチにはアクセス・ルーターをつなぎ,そこに1Gビット/秒のインターネット接続用のアクセス回線を収容している。これにより,多数の出展者の各ブースに十分な帯域のインターネット接続を提供できるようにした。