ポイントはここ!

●2011年のシステム移行に備え広大な店舗ネットワークをメガ級に増強

●店外ATMをBフレッツで接続,リモートからのソフトウエア更新を可能に

 北海道の中小企業や一般家庭をメイン顧客とした「どさんこバンク」こと北海道銀行(道銀)は2009年11月,主に道内にある支店と店外ATM(現金自動預け払い機)を結ぶネットワークの刷新を終えた。

 6月には約130カ所の支店を,NTT東日本の広域イーサネット・サービス「ビジネスイーサ ワイド」を使って基幹システムのある札幌のセンターに接続。さらに,「フレッツ・オフィス」を使って約330カ所のATMをセンターにつないだ(図1)。「ようやく広い道内で一つのサービスを一斉に始められる環境が整った」と,システム企画部の小林裕幸部長兼シニアマネージャーは語る。

図1●北海道銀行のネットワーク<br>3行共同利用システムの導入に合わせて道内の約130支店をビジネスイーサ ワイドで接続した。
図1●北海道銀行のネットワーク
3行共同利用システムの導入に合わせて道内の約130支店をビジネスイーサ ワイドで接続した。
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発端は地銀3行のシステム共同化

 ネットワークを再構築したきっかけは,横浜銀行,同じほくほくフィナンシャルグループの北陸銀行との3行で勘定系システムを共通化することだった。2007年3月,3行はNTTデータと,共同システムの開発に関する契約を締結。NTTデータが運営する地銀共同センターで,銀行業務用の勘定系パッケージを使ってシステムを構築することにした。

 システムの名称は「MEJAR(メジャー)」。横浜市の共同センターに,窓口からのオンライン取引用システム,ATMからのオンライン取引用システム,融資業務支援システム,そして実績や経営情報を管理・分析する統合データベースといった,銀行業務の基幹系システムを置く。

 各行から共同システムを利用するためのバックボーン・ネットワークも共通化した。札幌,富山,横浜にアクセス・ポイントを設け,それぞれをNTTコミュニケーションズ(NTTコム)と,各地域の電力系通信事業者が提供する広域イーサネット・サービスで接続したネットワークである。各銀行の本支店からは,MEJAR共同ネットワークを介して共同センターに接続する。アクセス・ポイント間ネットワークの帯域はいずれも100Mビット/秒で,NTTコム側を主回線,電力系事業者側をバックアップ回線として使う。

新アプリは広帯域が前提

 この共同システムに移行するに当たって,道銀では支店ネットワークの増強が必要になった。MEJARの新しいアプリケーションでは,例えば融資審査に使う書類のイメージ・データをやり取りするなど,従来よりも大きなトラフィックが発生するためだ。2008年に固まった共同システムの仕様には,「数Mビット/秒などある程度以上の帯域を確保すること」いう項目が盛り込まれた。道銀として警備用カメラの画像を相乗りさせたいなどの事情もあった。

 それまで道銀は,店舗端末や店外ATMとメインフレームの間を3.4kHzのアナログ専用線で接続していた。モデム経由で通信制御装置の「SURE SYSTEM 7000」(富士通製)に接続する形態で,データ圧縮装置を使って仮想的に帯域を増やし,情報系と勘定系のトラフィックを相乗りさせていた。

 しかし,これでは各支店から新アプリケーションは使えない。そこで本支店と札幌センター,札幌のMEJARアクセス・ポイントをビジネスイーサ ワイドで接続した。共同ネットワークの帯域を3行で分け合うというMEJARの契約上の理由から,各支店の回線容量には上限も設けた。アクセス回線のメニューは10Mビット/秒だが,各支店のルーターで3M~5Mビット/秒に帯域を絞り込んでいる。

 例外は道銀の札幌センターと本店。札幌センターには収益管理,営業支援などのサブシステムが残るため,依然として各支店からのトラフィックがある。ここでも勘定系などの新アプリケーションと同様にイメージ・データなどを扱うため,回線容量を1Gビット/秒とした。本店も支店に比べるとユーザー数が多いうえ,業務分析などのアプリケーションを利用する頻度が高く,トラフィック量が多いことから100Mビット/秒を引き込んだ。

店舗端末のリプレースと同時進行

 共同システムは既に完成していて,横浜銀行は2010年1月に使い始める。ただし道銀は現行システム(富士通製メインフレーム「GS21」)を2006年に導入したため,償却時期を待って2011年5月に共同システムに移行する計画としている。

 にもかかわらず2009年にネットワークを先行して刷新したのは,二つの理由からだ。一つは支店にある店舗端末が老朽化していたこと。MEJARに接続するために端末をIP対応にする必要もあった。もう一つは「システム移行のリスクを最小限に抑えたかった」(小林部長)ことである。

 勘定系システムの移行と端末の移行,そしてネットワークの移行を同時に進めると,トラブルが発生した場合に原因の切り分けが難しくなる。そこで,端末のリプレースを機に,ネットワークを併せて刷新することにした。

 ビジネスイーサ ワイドを選んだ理由は主に4点あった。(1)道内全域で数Mビット/秒を利用できること,(2)銀行業務に堪える信頼性の高いネットワークであること,(3)料金が拠点間の距離に依存しないこと,(4)“枯れた”サービスであること──である。