マネオの妹尾賢俊代表取締役社長
マネオの妹尾賢俊代表取締役社長
[画像のクリックで拡大表示]

 国内で初めて個人間融資仲介サービス「ソーシャルレンディングサービス(またはP2P融資サービス)」を2008年10月中旬に開始したマネオ(東京都千代田区)が、拡大策を矢継ぎ早に打ち出している。

 同社の妹尾賢俊代表取締役社長によれば、2009年11月現在の利用登録者数は借り手(ボロワー)と貸し手(レンダー)を合わせて1万2500人ほど。内訳では貸し手のほうが7割ほどを占めるという。融資残高は合計1億5000万円ほどで、2009年2月時点で年内に数十億円規模を目指していたのに比べると想定を下回っている(関連記事)。妹尾社長は現状について「認知度向上が最大の課題。話題性のあるサービスの拡充を通じて、利用を増やしたい」と語る。

 例えば2009年4月にオリックス・クレジット(東京都立川市)と提携し、貸し手側の貸し倒れリスクを軽減できる「G-Loan(ジーローン)」の提供を始めた。これは借り手の返済が滞った場合は、オリックス・クレジットが借り手の借入を保証することで貸し倒れリスクを軽減するというもの。直接の個人間融資のケースと比べて、借り手の金利はやや高めに、貸し手のリターンがやや低めになるものの、貸し手を募集すれば融資枠が埋まるのが早く「成立がスムーズになっている」(妹尾社長)という。

 2009年11月には「コーポラティブハウスオークション」というサービスを開始した。これは用地の購入、建物の設計・建築を共同で行う「建設組合」を複数人で設立した住宅取得希望者が対象。通常、住宅ローンは建物完成後に利用可能になるので、それまでの土地取得や設計・施工費用のつなぎ融資の機会をマネオが提供する。既に第1弾案件の貸し手募集を開始しており、金利が税引き前5%、融資枠1億3千万円となっている。「今回の案件は建設組合の構成者はすべて住宅ローンの事前審査をパスしており、土地担保も設定するので、貸し倒れリスクは低い。こうした案件でのソーシャルレンディングは世界的にも珍しい」(妹尾社長)と説明する。

 さらに次の一手として妹尾社長が検討を進めているのが、ソーシャルサービス(公共性の高いサービス)を立ち上げるソーシャル・アントレプレナー(社会起業家)向け融資の活性化だ。「女性の自立、地域活性化、環境関連といった案件に取り組みたい」(妹尾社長)という。既に、複数のNPO(非営利組織)に声をかけ始めており、2010年に何らかの提携が実現しそうだ。

延滞率抑制・回収強化策も検討中

 同社では延滞率の抑制や、回収強化策も検討している。2009年9月末時点で、60日以上の延滞債権は5.5%発生しているという。現状では90日間以内の延滞については、同社がはがきやメール、電話などで督促し、90日間を過ぎた場合は法務省認可を受けた債権管理回収業者に債権を売却している。

 回収強化のために今後は、半年間程度の延滞について債権を売却せずに督促を続ける方向で回収スキームの見直しを検討中だ。延滞率抑制に向けては、借り手の登録時の審査で、従来から用いているJICC(日本信用情報機構)の情報などに加えて、勤務先の在籍を独自に確認するなど2009年9月から与信を厳しくした。

 現状では、当初の2011年中に融資残高300億円という事業目標に変更は無い。「ジーローンで100億円強、コーポラティブハウスオークションで10数億円、残り180億円ほどを一般の個人間融資で達成したい」(妹尾社長)としている。