佐川急便文京店の「プロジェクトG」の掲示板。地元の幹線道路への“植林”を推進。同店安全推進課の星野耕助・係長(左)と佐藤憲次氏
佐川急便文京店の「プロジェクトG」の掲示板。地元の幹線道路への“植林”を推進。同店安全推進課の星野耕助・係長(左)と佐藤憲次氏
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 佐川急便が2009年度(2010年3月期)から始めた「エコ安全ドライブ大作戦」が、2009年4月から10月までのおよそ半年間で、配送車の燃費を前年同期比約3%改善させる成果を上げている。燃料費に換算すると年間数億円の節約になるという。これはセールスドライバー(集配を担当する運転手)への意識づけによって、燃料費の節約を図る取り組みだ。

 燃料費節約の活動自体は2006年度から展開しており、2008年度以前は「エコ安全ドライブ」活動と呼んでいた。車両別の燃費を実測できる「電子点呼システム」を全拠点で導入し、車両別の走行距離や給油量などを自動集計できるようになったのが2008年度のことだ。2009年度に入って前年度との比較が可能になったため、活動名を「大作戦」に改めて、同システムの活用にも本腰を入れた。

 具体的には、四半期ごとに3つの指標別に、上位に入った営業店を表彰する。3つの指標とは「燃費改善率(前年比の改善度)」「単純燃費(絶対値)」「燃料使用量削減率」――である。規模や所在地(都市部か地方か)によって有利不利が生じないよう、全国約360営業店を4つのグループに分け、それぞれのグループごとにベスト3の営業店を表彰することにした。

 1997年から「アイドリングストップ」を励行するなどしてきた同社では燃費向上の“のりしろ”は少ない。現在啓もうしている「エコ安全ドライブ7カ条」の内容は「アクセルは緩やかに踏む」「早めのシフトアップ」「速度を一定に保って走行する」といった「普通の運転習慣では行わないことばかりで、徹底するのは大変だ」(東京本部人事・安全管理部安全推進課の田村健司係長)。それだけにセールスドライバーの意識改革が、取り組みの鍵である。

地元の幹線道路で“バーチャル植林”推進

 そこで、佐川急便は営業店に意識づけのアイデアを競わせることで、7カ条の励行を促そうとした。

 例えば東京都文京区などを担当する文京店がその1例。同店は全国でエコ安全ドライブ活動が最も浸透している拠点の1つで、表彰の常連になっている。2009年10月の単純燃費(=通常の燃費の数字をさらに車両の容積で割り算したもの)は4.97(km/リットル・立方メートル)で、前年同月比9%、2005年度の同月比では19%と大幅に向上させた。

 文京店ではセールスドライバーへの意識づけの手法に一工夫がある。例えば「プロジェクトG」という独自の取り組みをしている。燃費向上でCO2排出量削減した分を積算し、そのCO2を吸収できるだけの樹木を植林すると想定。エリア内の幹線道路である「白山(はくさん)通り」に“植林”する架空の計画を進め、進ちょくを地図で張り出している。白山通りの中央分離帯の全長は2.9kmあるが、現状は300mほど進んでおり「完成予定日:平成32年11月20日」と書いてある。

 「数字で管理するだけでは、セールスドライバーのモチベーションは上がらない。一人ひとりの意識にかかっているだけに、自分や営業店がどれだけやったか実感がわくように工夫している」(文京店安全推進課の星野耕助・係長)。このほかにも、文京店では毎日エコドライブの実践度を点数化して、特定の2人で“対戦”させるなど、あの手この手で徐々に燃費を改善している。