グローリー本社工場内の様子。セル生産方式で金銭処理機を組み立てる(写真撮影:吉田 竜司)
グローリー本社工場内の様子。セル生産方式で金銭処理機を組み立てる(写真撮影:吉田 竜司)
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 金銭処理機大手のグローリーは2008年から「新製品垂直立ち上げ」に取り組み、成果を上げつつある。新製品の開発から量産に移行するプロセスを変革することで、従来あった開発部門と生産部門の壁を排除し、協働して原価を下げようとする取り組みだ。2009年4月以降に発売した紙幣入金機の新機種など数件の開発プロジェクトで順次適用。最終的には、製造原価を従来機種比で50%削減することを目指す。

 小原馨・執行役員本社工場長は「当社は国内生産が9割で、開発部門も生産部門も同じ敷地内にあり、5分で集合できる。一体化を進めることでもっと原価を下げられる」と説明する。

 「新製品垂直立ち上げ」では、開発部門の設計者と、生産部門の品質管理担当者、部品調達担当者、組み立て工程担当者など5~6人が部門横断チームを結成する。各チームは、「目標QCD」として品質・コスト・納期の目標値を設定。特にコストについては、量産段階で発生する不良品にまつわるコストなども加味した「実績原価」の極小化が目標だ。

 兵庫県姫路市にあるグローリーの本社工場内では、部門横断チームが短時間の「立ち会議」を連日のように行うようになった。会議の際にはFTA(欠陥ツリー解析)図をホワイトボードに書くなどしながら不良品の発生パターンを分析する。

 新製品の量産を開始する初期段階の1カ月間は、この立ち会議をほぼ毎日繰り返す。チーム内のコミュニケーションを日常化することで、開発部門は量産しやすい設計を徹底。これによって、不良発生によるロスを早期に押さえ込み、原価を下げる。生産側から「溶接の個所が多い」「組み立て方が複雑で間違いやすい」といった問題点を指摘されたとき、開発側は早ければ翌日までに設計自体を見直す。

 グローリーは、3次元CAD(コンピュータによる設計)導入や部品共通化、試作前のシミュレーション徹底など開発プロセスの改革は既に進め、これまでに開発費を3~4割削減する効果を出してきた。今回の施策で、コスト削減に拍車をかける。既存製品については中国や米国の工場への生産移管を推進する一方で、新製品については国内生産のままで大幅な原価低減が可能だという。