●アクセス・ポイントからシステムまでの遅延は2ミリ秒以下
●WDMは1波10Gビット/秒,リング状にして耐障害性を向上

「数十Gビット/秒級の大容量でつなぎ,さらに帯域の拡張性も確保する」,「アクセス・ポイント(AP)から売買システムまでの通信の遅延時間は2ミリ秒以下」,「基幹ネットワークの障害時には10秒程度で経路を切り替える」──。
東京証券取引所(東証)は2009年7月,こうしたキャリア・グレードとも呼べる能力と拡張性を持つ新ネットワーク「arrownet(アローネット)」を稼働させた。各証券会社が東証の取引システムに接続するための基幹ネットワークで,証券会社が接続する2カ所のAPと,売買システムなどを置く正副2カ所のデータ・センターをつないだ。この新ネットワークが,東証が2010年1月稼働予定の次世代取引システム「arrowhead(アローヘッド)」を支える基盤になる。
近年の証券取引市場における取引トラフィックの急増や取引処理の応答時間短縮への要求から,ネットワークへの要件は厳しくなっている。この要求に応えるべく東証は,WDM(波長分割多重)を採用し,超高速の光ファイバ網を中核とするネットワークを作り上げた(図1)。
光ファイバ網は首都圏をぐるりと囲むリング状。総距離は約150kmに及ぶ。その最も遠いルートを通っても,APから売買システムまでの遅延時間は2ミリ秒以下である。
東証の吉田康宏執行役員兼IT開発部情報システム第二部長は,「日本有数の“とんがった”ネットワークになった」と自負する。