小林製薬は、従来は13カ月程度かかっていた新製品発売を3カ月で実行する「スピード開発」体制を整えた。第1弾として、新型インフルエンザ国内発生確認直後の2009年5月下旬に「新型インフルエンザ対策プロジェクト」を発足。3カ月後の8月25日に、殺菌・消毒液の「薬用ウィルテクト」シリーズや、ウイルス対策機能を付加した「のどぬーるぬれマスク」の発売にこぎつけた。薬用ウィルテクトは初年度(2010年3月までの約7カ月間)の目標売上高12億円のうち、10月末までの約2カ月間だけで4億6700万円(進ちょく率38.9%)を売り上げ、順調な滑り出しを見せた。
スピード開発を実現できた要因は3つある。1つ目は、部門間の壁を取り払い、新製品発売に必要な研究・開発、生産プロセスの準備、マーケティング戦略の立案などの作業を同時並行で進める「垂直立ち上げ」の体制を順次整えたことだ。
2つ目は、小林豊代表取締役社長の指示で、2009年5月に各部門からプロジェクトメンバーを集めて、最優先課題として取り組んだことが挙げられる。研究開発部門、生産部門、マーケティング部門などから15人を集め、原則としてプロジェクトに専念させた。
3つ目は、スピードを最優先させたことだ。小林製薬は売れるパッケージデザインにこだわり、発売前に消費者を交えたテストを徹底的に行う。しかし、今回の新型インフルエンザ対策プロジェクトではこのプロセスを省いた。過去の別ジャンルの製品で安全性などを検証済みだったパッケージを流用することによって、短時間で量産体制を整えられるようにした。
同社の2009年度第2四半期(2009年7~9月期)の連結決算は、売上高が637億6000万円(前年同期比4.9%増)、経常利益が94億7300万円(同17.0%増)で、第2四半期としては過去最高益だった。売上高の増加分のうち11億円を新型インフルエンザ関連製品で稼ぎ出した。小林社長は、「新型インフルエンザに最優先で取り組み、スピーディーにお客様のニーズに応えられたから、厳しい経済環境であるにもかかわらず利益を上げることができた」と語る(関連記事)。