ジェネリック薬品大手の大洋薬品工業(名古屋市中村区)の高山工場(岐阜県高山市)は2009年度からバランス・スコアカード(BSC)を導入し順調に活用を進めている。財務、顧客満足、業務プロセス、人材と変革の4つの視点で数十個のKPI(重要業績評価指標)を設定し、進ちょくを管理している。BSC導入を契機に部門や職種ごとではなく工場全体で連携しながらの改善活動を活性化させることが狙いだ。5カ年計画で定めたコスト削減などの経営目標達成を目指す。

 同社は、自社ブランドのジェネリック薬品の開発・生産に加え、注射剤や錠剤の生産受託事業にも力を入れている。しかし近年、生産受託事業での競合する企業が増えたため、コスト競争力や品質管理の精度をより高める必要が生じた。

 そこで生産受託の中核となる高山工場では、5カ年計画で「コスト削減」「商品の安定供給」「品質向上」という3つの柱を経営目標に掲げている。これらの目標を達成するうえで、バランススコアカードを導入した。2009年の4月から9月にかけて、部門のリーダーが定期的にミーティングを開き、戦略マップの策定に取り組んだ。3つの目標の達成に当たって、財務、顧客満足、業務プロセス、人材と変革という4つの視点で、それぞれどのような目標が必要かを考え、その達成度を測るKPI(キー・パフォーマンス・インジケーター、重要業績評価指標)を検討した。

 これらのKPIをモニターするため、工場全体で「稼働日報」を初めて導入した。装置の稼働率やチョコ停時間、ロット切り替え時間など、設備の稼働にかかわるデータを収集するものだ。財務や業務プロセスの視点での評価データとなる。従来も部門ごとに稼働日報を導入した例はあったが、原料の調合から包装までの一貫プロセスで、生産性や設備の稼働率を追うために、日報のフォーマットを統一した。

 また人材と変革の視点でのKPIをモニターするために、OJTの実施状況や、社員のスキル習得状況、改善への取り組みなどを定量的に評価するためのガイドラインも導入した。「スキルマップ星取り表」などを壁に張り出して、人材の成長度を見える化し、部門間での競争意識も醸成する。

 これらのKPIの達成度をバランス・スコアカードの事務局が集計し、2010年3月に第一回のレビューを行う予定だ。