ひまわり証券の情報企画グループの久保修眞ゼネラルマネージャー(後列)、営業企画グループ証券企画チームの柏葉克俊氏(前列右)、営業企画グループFX企画チームの向井友代氏(前列左)
ひまわり証券の情報企画グループの久保修眞ゼネラルマネージャー(後列)、営業企画グループ証券企画チームの柏葉克俊氏(前列右)、営業企画グループFX企画チームの向井友代氏(前列左)
[画像のクリックで拡大表示]

 ひまわり証券は、毎月数十本以上提供しているウェブセミナーのキャスターや講師のアナウンススキルを向上させ、視聴者の同社に対するロイヤルティーの向上を目指す。2009年8月下旬に外部講師を招いてアナウンス研修を実施し、10月下旬から研修で教わったスキルを練習する会を週2回の頻度で始めた。

 「当社のウェブ番組から、例えばセミドル(セミナーアイドル)とでも言うような、人気スタッフを生み出したい。店舗を持たないネット証券へのお客様のロイヤルティーは、松井証券の松井道夫社長やマネックス証券の松本大社長のように有名な人によって生まれやすい」と情報企画グループの久保修眞ゼネラルマネージャーは語る。もちろんキャスターや講師のアナウンススキルを向上させることは、セミナー利用者の満足度向上にもつながり、口座開設のきっかけにもなり得る。

 ひまわり証券は自社サイト上で、毎月30本前後の録画形式のセミナー番組と、毎日5本の生放送形式のセミナー番組を提供している。生放送番組は録画でも視聴できる。これらウェブセミナーのキャスターや講師を務める人の大半は、同社社員である。社内にスタジオを完備し、自社で番組を制作している。セミナー利用者は、生放送が月間7200人程度、録画は月間2万9000人程度である。

 同社がアナウンススキルを高める重要性を強く意識し始めたのは、2008年に生放送形式の番組の提供を始めてからだ。それ以前の録画で放送していた番組はいずれも投資ノウハウを教える内容だったので、放送画面では資料を大写しにし、講師の顔は小さく表示していた。これに対し、生放送番組は株式市場の状況を伝えるものが中心で、キャスターを大写しにした。生放送番組を増やすにつれ、情報を言葉だけで分かりやすく伝える能力を持つ人材を増やす必要性が高まり、今回、訓練の仕組みを設けたわけである。

通常の3倍のテンションで話すのがコツ

 「テレビに登場する俳優は、通常の3倍くらいのテンションで話をし続けている。だから我々もそうしないと、『テレビを見慣れているセミナー利用者に暗い印象を与えかねない』と指導された」。久保ゼネラルマネージャーは、8月下旬に開催したアナウンス研修の一幕をこう語る。

 アナウンス研修は10人ずつ2グループに分けて、1グループ当たり3時間かけた。最初に受講者一人ひとりに原稿を読み上げてもらい、その様子を1~2分ずつビデオで撮影。その後、好感度を高める笑顔の作り方や口の開け方、原稿を読み上げるイントネーションやテンポなどについてのスキルを外部講師から教わった。最後にもう1度全員をビデオで撮って最初のビデオ映像と比較し、優れた点や改善された点を確認したり、さらに改善が必要な点について指導を受けたりした。

   研修受講者の1人である営業企画グループFX企画チームの向井友代氏は、「原稿を読むテンポが速すぎると言われた。早く終わりたい気持ちがあったので、自然とそうなっていた」と苦笑する。向井氏が担当する番組は、平日に毎日5分ずつ生放送している「FX指標@ライブ」。短い番組だからこそ情報を詰め込みすぎないようにし、視聴者が聞き取りやすく理解しやすいアナウンスを心がけるようになったという。「カメラをじっと見ながら話すことができていた点は褒められた。視聴者が安心するそうだ」と語る。

 週1本ペースで録画形式のセミナー番組の講師を務める営業企画グループ証券企画チームの柏葉克俊氏も、アナウンス研修を受講した。「研修前は、文章を読み上げるときにイントネーションが尻上がりになりがちだった。そうではなく、1つの文章の読み始めを最も高くし、文末を落とすほうが、視聴者が安心して聞きやすいと知った」と柏葉氏は話す。同氏は「画面から飛び出してくるくらいの勢いのテンションの高い話し方がすごくいい」と褒められた。その秘けつは、かつて対面で営業をしていた時の経験にあるという。

 現在では多くの証券会社が自社サイト上でウェブセミナーを開催している。いち早く2002年からウェブセミナーを開いてきたひまわり証券では、社外のフィナンシャルプランナーなどにセミナー講師を依頼するのではなく、できるだけ社員が務めるようにしてきた。「より実践的な情報を提供できるし、機動的に素早くいろんなセミナーを企画できる」と、久保ゼネラルマネージャーはその狙いを説明する。