新工場は建築家の小倉薫雄氏に一部のデザインを委託。エントランスなどに和のテイストを取り入れた
新工場は建築家の小倉薫雄氏に一部のデザインを委託。エントランスなどに和のテイストを取り入れた
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社員は毛髪混入防止作業服を着用
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仕掛かり在庫はバーコードで管理し、立体倉庫に出し入れする
仕掛かり在庫はバーコードで管理し、立体倉庫に出し入れする
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星野匡社長が就任した2001年は年商が27億円で3割が固定取引先だったが、パッケージデザインを手がけたり、積極的な営業を展開したりすることで成長軌道に載せた
星野匡社長が就任した2001年は年商が27億円で3割が固定取引先だったが、パッケージデザインを手がけたり、積極的な営業を展開したりすることで成長軌道に載せた
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 パッケージ印刷などを手がける総合印刷情報加工会社の横浜リテラ(横浜市戸塚区)は2009年10月23日、空気清浄や防塵、防虫、抗菌などの衛生対策を徹底した新工場を本稼働させた。全作業工程をクリーンルーム化したのは印刷業界では初めてだという。クリーンな環境で製版から出荷までの一貫生産を行うことで、食品メーカーや医薬品メーカー、化粧品メーカーなど衛生レベルの高い顧客を開拓し、2009年3月期に38億円の年商を、2年後には50億円まで増加させる狙い。

 本社敷地内の新工場は延べ床面積が約7800平方メートル。デザインや製版、印刷、表面加工・打ち抜き、品質検査、発送など、従来は複数の拠点に分かれていたり、他社に外注したりしていた機能を統合し、1拠点内で全工程を一貫処理できる体制を整えた。

 空調システムや加湿システムで工場内の空気をクリーンな状態に保つのに加え、エアシャワーや毛髪塵埃(じんあい)除去機で社員が工場内に塵埃などの異物を持ち込まないようにする。こうした対策によって、浮遊塵埃数30万クラスという医薬品の製造工程並みの清浄度を保つ。品質検査ではすべての商品をCCDカメラで撮影し、塵埃などの付着がないかをチェックする。

 生産プロセスの効率化も進める。仕掛かり在庫はすべて立体自動倉庫で保管し、次の工程が始まる際に無人搬送ロボットで現場に届ける。搬送にかかわる人手を減らし、かつ作業ごとに資材や製品をジャストインタイムで届けることで、生産性を3割向上できる見込みだ。

 横浜リテラでは新工場の企画が始まった2007年度から「LIFEプロジェクト」と呼ぶ中期経営計画の達成を目指し、様々な業務改革や組織改革のプロジェクトに取り組んできた。「トヨタ生産方式のコンサルタントを招いて在庫管理を学んだり、印刷機メーカーの小森コーポレーションの研修コースで印刷機械の保守保全について学んだりして、効率的な業務運営や技術力の向上を目指してきた」と星野匡代表取締役社長は話す。新工場の建設には年商に匹敵する30億円を投じた。そこには、「業界で類のないクリーン工場という特色を武器に、新たな市場を開拓したい」(星野社長)という狙いがある。