サトーの野木りえ子・三行提報事業部部長(左)と徳永清徳品質保証部品質・環境管理グループ課長(右)。野木部長が手に持つのは、業務改善の表彰成果を見える化した盾。徳永課長が掲げているのは、社内でデザインを募集した環境活動のイメージキャラクター
サトーの野木りえ子・三行提報事業部部長(左)と徳永清徳品質保証部品質・環境管理グループ課長(右)。野木部長が手に持つのは、業務改善の表彰成果を見える化した盾。徳永課長が掲げているのは、社内でデザインを募集した環境活動のイメージキャラクター
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 ラベル・印字機メーカーのサトーは、業務改善提案などを全社員が毎日提出する仕組み「三行提報」の運用を強化した。2009年度から三行提報の表彰制度を変更。チームと社員の受賞機会を増やしたり、1年間のチーム成績の推移を「見える化」したりして、三行提報を通じた業務改善のさらなる活性化を狙っている。サトーは「三行提報」の運用体制を強化し続けることで、この仕組みの利用を30年以上にわたって盛り立ててきた。「『チームがゲーム感覚で一体感を持って取り組める』など、今回の変更には好意的な意見が多い」と野木りえ子・三行提報事業部部長は語る。

 三行提報は、社員が会社や仕事に対する気づきや思い、意見、不満、改善案などを3行(127字)以内にまとめ、経営トップに宛てて毎日提出する仕組みである。他部署の業務の改善案を提出してもかまわない。30年前は紙に書いていたが、現在は専用のIT(情報技術)ツールがあるのでパソコンを使って提出する。提出率は99.9%に達し、病欠や出張などやむを得ない事情がない限り約1900人の社員の全員から毎日提報が出される。

   今回手を加えた表彰制度は、三行提報を使って提出した数々の業務改善案を実行に移し、大きな成果を出した部署を表彰するというもの。改善のきっかけになった提案を多数した社員も表彰される。優れた提案には経営トップや関連部署からポイントが付与され、月間および年間の累計獲得ポイントを部署単位や個人で競う。高得点者は表彰される。また、半期に一度、獲得ポイントに応じて賞金が支給される。

 今回の制度変更で大きく変わったのは、表彰を受けるチャンスが増えたこと。2008年度までの表彰制度では、全社が7部門に分けられ、各々の部門ごとの1位だけ(営業部門だけチーム数が多いため3位まで)が毎月表彰された。つまり、以前は計9チームまで毎月表彰のチャンスがあった。

 2009年度からは営業部門を東日本と西日本に分割したので、全社で8部門となった。さらに、各部門内のチーム数に応じて2位または3位までを表彰する形に変えた。従い、毎月表彰のチャンスがあるチームは18チームに増えた。個人が表彰されるチャンスも従来の毎月20人から同24人に広げた。

 同時に1年間のチーム成績の推移を見える化した。1位チームには金メダル、2位チームには銀メダル、3位チームには銅メダルのシールを配り、専用シートに張り付けて各部に飾るようにした。

環境活動のボトムアップの盛り上げに役立てる

 サトーは2009年8月21日~9月20日、環境活動「エコチャレンジ」の具体案を、三行提報を使って募集した。約1カ月で提案が2390件も集まった。エコチャレンジ活動の事務局役を担う徳永清徳品質保証部品質・環境管理グループ課長は、「環境活動は上からの押しつけでやっても長続きしない。下からの盛り上がりが大切で、それには三行提報が有効だ」と語る。エコチャレンジ活動は、西田浩一社長の発案で2008年4月に正式にスタートしたもので、事業活動を通じて排出するCO2の削減を活動の目標として掲げ、年間目標値の達成に取り組んでいる。

 今回寄せられた提案の内容は「小学生に社内見学をしてもらう際、当社の環境活動を紹介してはどうか。環境活動に熱心な小学校からの逆提案も見込める」「営業拠点の運転日報に燃費を書いて楽しく競い合っている」「定時で帰る仕事力を付ければ、会社の電力量を抑えられるし、家族が一緒に夕食をとれるので家庭の光熱費も浮く」など。三行提報には検索機能があるので、他人のやり方を真似て職場や家庭で実践するきっかけにもなる。

 このように、三行提報は社員に業務改善を促すだけでなく、環境活動のような経営トップが全社を挙げて取り組みたいと考えた新しい活動を推進することにも役立つ。サトーは2009年1月から三行提報システムの外販を始めた。導入した数社の企業はいずれも「社員一人ひとりの声を聞いたり、お客様の反響をいち早く知ったりすることに経営トップが熱心な数百人規模の会社」だという。

■変更履歴
記事公開当初,本文1段落目と写真キャプションで「野木りさ子・三行提報事業部部長」とあったのは,「野木りえ子・三行提報事業部部長」の誤りです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2009/10/21 21:00]