アーコン・ホスピタリティ人事部の石橋裕一郎ディレクター
アーコン・ホスピタリティ人事部の石橋裕一郎ディレクター
[画像のクリックで拡大表示]

 米ゴールドマン・サックスグループの資産管理事業関連会社としてホテルの運営支援を手がけるアーコン・ホスピタリティ(東京都港区)は2009年9月、支援先である全国13のホテルの人時管理を徹底して採算性を高めるIT(情報技術)活用策を本格的に実施した。新たに導入した勤怠管理システムによって時間帯ごとの勤務状況を把握したうえで、人材配置を最適化して従業員の勤務時間を5~10%削減したい考え。人件費負担を下げ、ホテルの採算を改善する狙いだ。

 ホテルは季節や時間帯によって繁閑の差が大きいうえ、コストの大半を人件費が占める。このため、いかに適切なシフトを組み、効率的な人材配置をするかが採算性を左右する。ところが、アーコン・ホスピタリティが支援するホテルではこれまで、マネジメント体制にばらつきがあった。「当日の来客数に対する従業員数が適切だったのかどうかをチェックしていないホテルが多かった」(人事部の石橋裕一郎ディレクター)

 このため、出退勤と来客数のデータを参考に、生産性を分析できるツールを開発。管理職が最適なシフト表を作成する作業を支援するとともに、勤務計画に基づいて運用した結果をチェックして次の改善につなげるPDCA(計画・実行・検証・見直し)を回す仕組みを整えた。

 具体的な仕組みはこうだ。計画フェーズでは、各部門の管理職が翌週の来客数をまず予想。そして従業員の勤務計画を作成する。予想来客数と、計画した従業員数のバランスが適切かどうかを、今回開発した生産性分析ツールによってチェックする。人数の過不足があれば調整する。

 検証フェーズでは、実行段階で得た2つのデータを活用し、各ホテルの支配人が週次で生産性をチェックする。2008年に導入したネオレックス(名古屋市)の勤怠管理ASP(ソフトの期間貸し)サービス「バイバイ タイムカード」に記録された各従業員の出退勤データから、それぞれの部門の労働時間を算出。もう1つのデータは、来客数の集計システムに記録された各部門の来客数である。この2つのデータに基づいて生産性分析ツールが部門別の生産性(来客数に対する総労働時間)を割り出す。その結果、配置した従業員数が多過ぎたり、逆に少な過ぎて残業手当が増えていたときなどに、支配人は管理職に実情を確認して、改善するよう促す。

 この仕組みは、オリエンタルホテル東京ベイ(千葉県浦安市)で先行して稼働させた。ほかのホテルでもシステムの導入を順次進めており、2009年度中にはアーコンが支援するほぼすべてのホテルへの展開を終える計画だ。