大成建設は2009年10月末をメドに、業務で利用するパソコン用の新しいセキュリティー診断ツールを稼働させる。全国各地や海外の工事現場で利用しているパソコンに一律のセキュリティー管理基準を適用。コンピュータウイルス感染や、図面など重要なデータが流出するリスクを回避するのが狙いだ。大成建設はこのツールを同業他社にも開放する方針で、業界全体のセキュリティーレベル底上げにつなげたい考えだ。

 診断ツールは、パソコンから一時的にでもインターネットに接続する環境があれば利用できる。専用のウェブサイトに接続して簡単な操作をすれば診断が始まる。「ウイルス対策ソフトウエアが正しく稼働している」「Winny(ウィニー)などのファイル交換ソフトが入っていない」などの項目を自動的に診断し、問題なければ「認定証」の画像が発行される。診断ツールは大成建設のセキュリティー方針に基づいて、セキュリティー対策ソフトウエア大手のトレンドマイクロが開発した。

 こうしたセキュリティー診断ツールの導入は、LAN環境内では一般的だが、大成建設の場合には様々な課題があった。1000以上ある作業所(建設工事現場)は、都市部から離れたダム工事現場や海外にも点在している。作業所では、大成建設社員だけではなく、協力業者などが自前のパソコンで大成建設が用意した情報システムを利用するケースもある。このため、パソコンの機種や導入ソフトウエア、通信環境などを統一するのは難しい。

 同社のCIO(最高情報責任者)に当たる柄登志彦・社長室情報企画部長は、「建設業では、工事現場のパソコンが安全に使えるようにしない限り、企業情報システムとしての“全体最適”が実現しない」(関連記事)と説明する。

 工事現場での安全なパソコン環境の確保は建設業界共通の課題だ。大成建設は既に、業界団体である日本土木工業協会と建築業協会を通じてほかの建設業者への診断ツール利用を呼びかけている。まず、大手ゼネコン4社(鹿島、清水建設、大林組、竹中工務店)に採用してもらうことを目指す。診断ツールの共同利用が進めば、協力業者も含めた業界全体のセキュリティーレベルを向上できるうえ、大成建設単独で対策に取り組むのに比べてコストを削減できるとみている。