アイスタイルの吉松徹郎代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)
アイスタイルの吉松徹郎代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)
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 化粧品口コミサイト「@cosme(アットコスメ)」を運営するアイスタイル(東京都港区)が、同サイトで得た口コミ情報をリアル店舗関連事業に生かす取り組みを強化している。2009年9月4日にはJR池袋駅のホーム上に直営の4号店となる「@cosme store switch(アットコスメストアスイッチ)」をオープンした。さらにファミリーマートと提携し、10月20日からはファミリーマート7300店で@cosmeの口コミ情報を生かした陳列が始まる予定だ。

口コミ情報生かす陳列で既存店と差別化

   アイスタイルは「@cosme store(アットコスメストア)」という名称で2007年3月からリアル店舗事業を展開してきた(関連記事)。「化粧品販売店の多くは、メーカー主導で棚作りをしているため、商品ラインナップも店内レイアウトも似てくる。一方、アットコスメストアは消費者視点の店作りを徹底できている点が支持されている」と吉松徹郎代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)は語る。

 アットコスメストア1号店は、JR新宿駅に隣接するルミネエストのテナントの中で上位の売上高を誇るという。好調さの要因は、「独特な棚割りと品ぞろえによって、来店者に気づきを与えることができている点にある」(吉松社長)。実際は、通常の化粧品販売店との商品ラインナップの違いは2~3割程度に過ぎない。だが様々な切り口のランキングに基づいた商品棚を提示することで、「こんな商品があったんだ」という気づきを生む。アットコスメに投稿された口コミをPOP(店頭販促)にすることでも、来店者の共感を得ている。

 一方、2009年10月20日からは沖縄県以外にあるファミリーマート約7300店の日用品棚の一部が、アットコスメの化粧品や入浴剤などの口コミランキングに基づいた陳列に変わる。コンビニエンスストアでは一般的に、食料品や飲料と比べて日用品は商品の回転が鈍い。日用品棚を強化できればファミリーマートにとっては、商品の回転を早めることと、比較的手薄な顧客層である20~40代女性の取り込みにつながる。「人気ランキングに応じて棚作りをするのは、TSUTAYAの映画や音楽の棚作りと同じで、すごく健全なこと。商品数が多い化粧品ではなおさらだ」と吉松社長は勝算を口にする。

異なるタイプの店舗増やしノウハウをパッケージ化へ

 アイスタイルが様々なタイプの店舗を開設したり、ファミリーマートと提携を結んだりしているのは、口コミ情報による陳列ノウハウを武器に、小売業への本格進出の可能性を探っているからだ。直営店と加盟店のどちらを増やすかはまだ未定だが、2011年をメドにまず10店舗を開く予定である。どんな立地ならどんなタイプの店舗が適しているかを試し、そのノウハウをパッケージ化できるかどうか見極めていく。

 ノウハウ獲得のため、現在4店あるアットコスメストアはいずれもタイプが異なる。並べられる商品数、立地、交通の利便性などが違うのだ。1号店は約60坪と比較的広い。2008年11月にJR上野駅から徒歩1分の距離にあるマルイシティ上野内にオープンした2号店は約40坪である。百貨店や駅ビルの多くが約20坪単位でテナントスペースを貸与しているため、60坪よりも40坪のほうがいろんな場所に出店しやすいと考えた。2009年4月にJR渋谷駅から徒歩5分のマルイシティ渋谷内に設けた3号店もほぼ40坪である。今回のアットコスメストアスイッチは駅中にあり、約4坪しかない。

 吉松社長は今回の4号店について、「従来は当社のサイトも店舗も利用者は意識してそこを訪問する形態だったが、今回の店舗は偶然の出会いをもたらす」という点を期待する。駅ホーム上の店なら、たまたまその駅を利用した人がふらっと立ち寄る可能性が高いからだ。4号店では、化粧品だけでなく、美容系や健康系の飲料、菓子、女性誌なども販売している。