「きもちで」「シチュエーションで」「アーティストの空気感で」という3種類の軸で、合計67個のタグを設定。ユーザーが指定したタグに該当する商品がジャンル横断で表示される
「きもちで」「シチュエーションで」「アーティストの空気感で」という3種類の軸で、合計67個のタグを設定。ユーザーが指定したタグに該当する商品がジャンル横断で表示される
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個別の商品紹介画面では、そのCDにひも付けられたタグをすべて確認できる。表示面積が大きいタグほどユーザーからの評価が高い
個別の商品紹介画面では、そのCDにひも付けられたタグをすべて確認できる。表示面積が大きいタグほどユーザーからの評価が高い
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「今後は書籍やDVDにもHMVタグタイルを活用することを検討中」と話す新美朋子EC事業本部EC企画部長
「今後は書籍やDVDにもHMVタグタイルを活用することを検討中」と話す新美朋子EC事業本部EC企画部長
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 CDやDVDの小売り大手HMVジャパン(東京都港区)は、ECサイトの「HMV ONLINE」に、購入者の気分やシチュエーションに合致したCDを選べる機能「HMVタグタイル」を追加した。「とことん沈みたい」「戦闘モード」といった気分にマッチしたCDを検索で探せる。2009年7月の提供開始以来9月末までの3カ月間で、HMVタグタイルを利用した人のCD購買率は利用していない人の2倍になり、購買促進に効果があることが明らかとなった。

 HMVタグタイルは、サイトを訪れた人に商品を推薦するレコメンデーション機能の一種。過去にそのCDを聞いた人の評価を基にして、商品を探す人のニーズに応じた商品を提案する。HMVでは従来も、「このCDを買った人はこんなCDも買っています」というように購買動向に基づいて関連商品を提示したり、そのCDを購入した人にレビューを書いてもらったりすることで、レコメンデーションを行ってきた。これらに加えて、「ユーザーがより感覚的に商品を探せるよう支援するのがHMVタグタイルだ」とEC事業本部の新美朋子EC企画部長は話す。

 HMVタグタイルでは、「きもちで」「シチュエーションで」「アーティストの空気感で」という3種類の軸で、合計67個の「タグ」を設定している。例えば「きもち」の軸では、「アゲアゲ」や「とことん沈みたい」などのユーザーの心理状態をタグと定めた。同じく「シチュエーション」の軸では「ドライブ」「通勤・通学」「しみじみ飲む」など生活上のシーンを、「アーティストの空気感」の軸では「オーガニック」「スルメ系」などアーティストの雰囲気やテイストをタグとした。

 HMVジャパンは、これらの67個のタグをHMV ONLINEで扱う多数のCDにひも付けるために、ユーザーにこれまでに聞いたCDがどのタグに当てはまるかを評価してもらい、タグ情報を蓄積してきている。評価してくれたユーザーにポイントを付与するといった促進策によって、現在までに約2万6000アイテムのCDにタグ情報をひも付けることができた。

 HMVタグタイルを利用する際は、CDを探している人が自身の気分やシチュエーションに合ったタグを指定すると、そのタグにひも付けられたCDの一覧が表示される(写真上)。さらに、個々のCDの紹介画面ではそのCDに対して与えられた複数のタグをすべて確認できる(写真中)。

 「Jポップやロック、クラシックといった従来の音楽ジャンルを超えて、ユーザーが求める情報を提供するのも狙いの1つ」と新美部長は話す。例えば「きもち」のタグである「アゲアゲ」は普通はダンスミュージックなどに使われる表現だが、HMVタグタイルにおいてはクラシックのジャンルであっても「アゲアゲ」と評価されたCDが相当数ある。HMVタグタイルで気分やシチュエーションに合ったCDをジャンル横断で一覧表示することによって、普段は聞かないジャンルの音楽にも興味を持つように促せる。

 HMVジャパンは、HMVタグタイルの利用者数を公表していない。だが9月末時点でHMV ONLINEサイトでの滞留時間も閲覧ページ数も、タグタイルの利用者は利用していない人の3倍以上の値を示しており、「期待を大きく上回る成果があった」(新美部長)という。

 現時点では、HMV ONLINEで取り扱う約160万点のCDのうち、タグがひも付けられている商品は2%弱に過ぎない。対象商品の拡大と同時にHMVタグタイル自体の認知度を向上させるため、ブログパーツの配布などに取り組んでいる。