1800個もの商品箱を壁一面に埋め込んだ消臭プラグのデザインミュージアムで、フルモデルチェンジした戦略商品をアピールする鈴木社長
1800個もの商品箱を壁一面に埋め込んだ消臭プラグのデザインミュージアムで、フルモデルチェンジした戦略商品をアピールする鈴木社長
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 エステーは2009年9月18日、電子式消臭芳香剤2品をフルモデルチェンジして発売した。同社では、2008年9月のリーマンショック以降に悪化した業績を立て直すため、2009年4月1日に2年ぶりに創業家出身の鈴木喬取締役会会長が代表執行役社長に復帰している。今回の新商品は、社長復帰から5カ月半後に出た初の戦略商品。スピード経営を掲げる鈴木社長は、同社にとっても前例のない短期開発を実現させた。

 今回発売したのは、一定間隔でミストを自動噴出する電池式自動消臭スプレー「自動でシュパッと消臭プラグ」と、部屋全体に消臭効果を広げる電源コンセント差し込み式の消臭芳香剤「消臭プラグ」の2つだ。

 両商品は現場革命とデザイン革命を掲げる鈴木社長の肝いりで開発された。鈴木社長自らが現場の開発担当者を指名したうえで、パッケージデザインは世界的に有名な若手デザイナーである佐藤オオキ氏に依頼。丸みを帯びた真っ白の外観に仕上げた。主力商品のデザインを思い切って変えることで、鈴木氏の社長復帰後にエステーが変わったことを内外にアピールする狙いもある。

 モデルチェンジした商品は容量はそのままに、デザイン改良できょう体を約25%コンパクトにしたことで部材コストも削減。価格は、自動でシュパッと消臭プラグが従来品よりも100円安い1300円、消臭プラグは140円安い630円(いずれも税抜き)に値下げした。エステーは両商品で、従来品の2.5倍の年間販売数量に相当する1450万個という強気の初年度販売目標を掲げた。

「余計な会議をやめたらミュージアムのスペースができた」

 デザイン革命を掲げる鈴木社長の消臭プラグに賭ける意気込みは、2009年9月初旬に3日間連続で開かれた商品説明会にはっきりと表れていた。同社のR&D(研究開発)センターの会議室を商品発表のためだけに全面改装し、佐藤氏が空間デザインを手がけた消臭プラグの「デザインミュージアム」に変貌(へんぼう)させた。まるで美術品のように商品を陳列し、ライトアップしてデザインの変化を強調した。

 デザインミュージアムに姿を現した鈴木社長は冗談めかしく商品開発エピソードを語った。「私は社長に復帰すると同時に、余計な会議はすべてやめさせた。意思決定を早め、スピード経営を一層加速させるためだ。ほとんどの会議をやめてしまって本当に大丈夫かと心配する社員もいたようだが、5カ月半たっても何の問題も起きていない。それどころか、意思決定を早めれば、5カ月半で既存商品をフルモデルチェンジできることを証明できた。余計な会議をやめたら会議室が余ったので、ミュージアムに改装できたよ」

 2つの戦略商品の開発エピソードには、鈴木社長ならではの経営理念が凝縮されている。