富士ゼロックスは2009年9月11日、従業員向けの「安否確認システム」にインフルエンザ感染の有無を入力してもらう機能を追加した。同システムは従業員に安否情報をキー入力もしくは音声吹き込みで入力してもらうもので、2007年から大地震対策を念頭に運用してきた。パソコンのほか携帯電話からの入力にも対応している。今回の新型インフルエンザ対応に際して、入力対象者も正社員以外に派遣社員も加えた。対象者数は約3万3000人になる。

 同社総務部リスク管理グループの西田隆文・危機管理担当マネジャーは、「新型インフルエンザについては、国際機関や行政機関などが発信する情報が錯綜しており、リスク管理上の判断が難しい局面が多い。リスク拡大に先んじて手を打つうえで、従業員のり患情報がよりどころになる」と説明する。新型インフルエンザ拡大に備えた同社の事業継続計画(BCP)においても、安否確認システムの稼働も含めた情報収集機能の維持を最優先に掲げている。

 同社は2005年に新型インフルエンザに関する調査活動に着手し、同年内に大流行時のための「パンデミック・プラン」の大枠を決めて経営会議で報告していた。2009年2月には計画内容を具体化した「事業自粛と最低限の必須業務の考え方」を策定した。

 同年4月にメキシコでの新型インフルエンザ大流行が明らかになると、BCPの実行段階に入った。この当時は、かなり厳しい強制措置を講じた。例えば、顧客が集まるセミナーや、社内の集合研修を全面自粛した。また、従業員が海外旅行・出張時にメキシコなどを乗り継ぎで経由しただけでも自宅待機を命じるなどした。

 その後、情報が明らかになるにつれて、警戒措置を緩めたものの、同年9月上旬時点で関係者・外来者を問わずオフィス入場時に手指消毒を義務づける措置は継続している。東京都港区の本社オフィスでは、セキュリティー・ゲートへの通り道に消毒液を置き、入場する人には必ず消毒してもらっている。西田マネジャーは「リスク管理の基本として、後で振り返ってみて多少過剰だったとしても、“見逃し三振”は許されない。従業員の心理的にも、まず厳しい措置を取ってから徐々に緩和するほうが受け入れやすいと考えている」と説明する。