居住者同士のコミュニケーションを促すため共用スペースにあるプールバー(写真はシェアプレイス東戸塚)
居住者同士のコミュニケーションを促すため共用スペースにあるプールバー(写真はシェアプレイス東戸塚)
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共用スペースにあるフィットネスジム(写真はシェアプレイス東戸塚)
共用スペースにあるフィットネスジム(写真はシェアプレイス東戸塚)
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個人の居室にはベッドやミニ冷蔵庫などがあらかじめ設置されている
個人の居室にはベッドやミニ冷蔵庫などがあらかじめ設置されている
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 東京電力のグループ会社で、住宅のリノベーション(再利用)事業を手がけるリビタ(東京都渋谷区)は、1つの住宅を複数の居住者で共用するシェアハウス事業を拡大する。現在5棟202件の物件を供給しているが、今後1年間で供給数を倍増する予定。企業の独身寮などを改造し、現在の居住ニーズに合わせて再生させる。

 シェアハウスとは、複数の居住者がそれぞれ独立した部屋を確保しつつ、居間や台所、風呂などを共用する居住形態のことで、ゲストハウスとも呼ばれる。かつては海外からの旅行者の短期滞在用に使われてきたが、近年は賃貸住宅の新しい形として専用物件が供給され始めている。

 リビタは「シェアプレイス」のブランドで2006年からシェアハウス事業に参入した。現在5棟を賃貸運営し、部屋数は202件。住宅リノベーションを手がける同社では、老朽化した社宅をマンションに改造する案件を手がけることが多いが、その際独身寮のリノベーションについても相談される機会が多かった。個室に水回りがなく、食堂や大浴場といった共用スペースが広いという独身寮の構造をどのように生かしてリノベーションできるかを検討し、シェアハウスにたどりついた。

 「検討当時、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が流行し始めていたことがヒントになった」と森尻謙一常務取締役は話す。若い独身者はプライバシー重視だとみなされてきたが、実はコミュニケーションを求めているのではと同社は気づいた。そこで「コミュニケーションを付加価値として提供できる新しい共同居住形態」としてシェアハウスの供給を始めた。内装デザインを変え、キッチンや風呂をオール電化にするといった機能性の強化はもちろん、共用スペースをフィットネスジムやプールバー、ダーツバーなどに改造することで、居住者同士が共同で楽しめる場を提供することにした。

 居住者は25~30歳の独身者が中心で、女性が多い。「セキュリティーを考えると、ワンルームマンションより周囲の目があるほうが安心と考える人も多い」(森尻取締役)。2008年からはリビタが管理運用も手がけ、共用部には清掃業者を入れるなど施設管理を徹底したり、共同生活のルールを作って住民間のトラブルを未然に防いだりと満足度向上を図っている。

 周囲のワンルームマンションより高い賃料を設定している物件もあるが、待ち行列ができるほどの人気を博している。顧客の支持を得て事業の拡大に取り組み、2010年夏までに供給戸数を倍増する予定だ。