飲食店情報検索サイト「ぐるなび」で、「訳あり」をキーワードにした販売促進が加盟店から好評を得ている。携帯電話向けのぐるなびモバイルサイトで2009年7月1日から「お得な訳あり特別クーポン」を提供する飲食店のキャンペーンを始めたところ、わずか1カ月で1200店もの加盟店が同クーポンを発行するようになった。開始当初に比べて5倍近くに参加店数が伸びたという。

 サイト運営会社のぐるなびは、「今回のキャンペーンに賛同してくれた飲食店は、マイナス面をアピール材料にできる、と考えている。同じ商品でもどうアピールするかで消費者の受け止め方が変わる」(総合政策室広報の栗田朋一リーダー)と反響の理由を解説する。このモバイルサイトでは、「冷房の効きにくい個室でアイスクリーム食べ放題」「夜景が売りのお店だけど夜景の見えないカップル席ならワイン半額」などといった(乱用注意)訳ありクーポンを提供する飲食店が紹介されている。

 モバイル版サイトに先立ち、パソコン向けサイト内の「ぐるなび食市場」では、2008年8月から海産物やスイーツや果物などの「訳あり食品」の提供を始めた。これがインターネット通販上で盛んな「訳あり食品」ブームに火を付けたとの見方もある。販売も好調だ。ぐるなび食市場での訳あり食品の売り上げは、1カ月後の同年9月には2倍に伸び、2009年1月以降は同10倍以上で推移しているという。今ではぐるなび食品市場では常時百数十種類の訳あり食品を提供し、毎週2回のペースで10商品程度を入れ替えている。

 訳あり商品は、「欠点のある商品は売れない、買いたくない」という既成概念を打ち破った販促手法だ。ほかの商品分野でもマーケティング担当者の知恵次第で、新たな訳あり商品ブームを引き起こせる可能性は高い。その鍵は、多くの消費者が納得できる「訳」を買い手にきちんと提示できるかどうかだ。ぐるなびの矢澤美幸企画department企画第3グループぐるなび食市場チームリーダーは、「食品の訳あり商品なら、正規品と味は同等においしいのは基本。そのうえで、なぜ安いかについての納得のいく訳が欠かせない。写真や文章などで商品情報を多く伝えることができるネットの特性を生かしたのが、訳あり商品だ」と話す。