写真1●従業員のIDカードを読み取って、いつ誰が重要書類を社内便の受付窓口に手渡したかを記録
写真1●従業員のIDカードを読み取って、いつ誰が重要書類を社内便の受付窓口に手渡したかを記録
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 損害保険ジャパンはこの1年ほど運用してきた社内便の紛失防止策が、対策システムの費用以上の成果を上げたことを明らかにした。同社は2008年5月から、書類に張られたバーコード付きの送付状を社内便の経由地で読み取って、配送状況をリアルタイムに記録できるシステムを運用していた。

 その結果、1年以上にわたり保険の申込書などの重要書類を1件も紛失していないうえ、従来使用していた複写式のあて名シールが不要になり資材代を削減できた。さらには仕分け業務や、行方不明の書類の問い合わせ対応業務も軽減できたという。

 今回の対策には外部のASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)の利用料が発生しているが「あて名シールの削減分だけでもトントンになっている」(総務部総務第一グループの奥村義康課長代理)という。

1日6000通以上の配送状況を記録

 同社では全国各地の拠点から保険の申込書類を送り出すなど、拠点間で大量の重要書類が行き交っている。本社を経由するものだけで1日当たり約2800通、全社規模では同6000~7000通の重要書類が流通するという。

 こうした重要書類をやり取りする際に、従来は複写式のシールに手書きであて先を記入し、通常の送付物と同種類の封筒に張って送付する体制を敷いていた。差出人と受取人がそれぞれ複写式のあて名シールにサインし、封筒を返送することで、重要書類のやり取りが完了した記録を残せるようになっていた。

 しかし、「途中の配送網を正しく経由しているかどうかが全く分からなかった」(総務部総務第一グループの奥村義康課長代理)。また、社内便が正しく到着せずに行方不明になった場合、追跡調査に時間がかかりがちだった。本社だけでも毎日10件以上の問い合わせがあり、担当者はその対応に1件当たり15分程度の時間を要したという。

写真2●重要書類に添付された送付状を読み取る仕分け担当者
写真2●重要書類に添付された送付状を読み取る仕分け担当者
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 また、シールに正確なあて先を記入せずに送付する従業員が少なからずいた。こうした社内便は正確なあて先を仕分け担当者が判断するのに時間がかかり、誤配送のリスクを抱えていた。個人情報が記載された重要書類を紛失するリスクも抱えていたことになる。


バーコード付きの送付状で経路を記録可能に

 そこで今回導入したシステムでは、差出人の従業員は、送付元、送付先、送付内容などの情報を入力してバーコード付きの送付状を作成し封筒に張る。これにより、複写式のあて名シールが不要になった。システムは、ヤマトホールディングス傘下のヤマトシステム開発(東京都江東区)のASP、「社内便追跡ASP」を利用している。

 仕分けの際にバーコードを読み取ることで仕分け業務が省力化された。拠点間の発送・受け取りの際などにもバーコードを読み取ることで、配送経路とその日時などの記録を残せるようになった。社内便を受け取った従業員がシステム上で受領登録を済ませると、自動的に電子メールで送付者に受領通知が送られる。こうして不着の問い合わせが減り、対応に要する時間も減った。

 奥村課長代理は1年間運用して全くトラブルが発生していないことを高く評価している。「将来的には、現在は社内便での送付を認めていない電子媒体や顧客のレントゲン写真も、このシステムの下で社内便に切り替えたい」という。同社では2006年に社内便で個人情報の入ったUSBメモリーを紛失する事故を起こして以来、社内便による電子媒体の送付を禁止している。これらは外部の運送会社を使って拠点間でやり取りしているが、全社規模で数千万円のコストが発生している。今回の仕組みで社内便に切り替えられれば、相応のコスト削減を実現できる。