西日本鉄道のICカード「nimoca(ニモカ)」。<br>原則として、利用者からは氏名などの個人情報を取得し、マーケティングに活用する
西日本鉄道のICカード「nimoca(ニモカ)」。
原則として、利用者からは氏名などの個人情報を取得し、マーケティングに活用する
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 西日本鉄道は2009年7月4日から、西鉄の電車とバスで使えるICカード乗車券・電子マネー「nimoca(ニモカ)」を用いて、公共交通機関の利用を促す「バス&レール『エコライド』キャンペーン」を実施している。同年8月30日までの土曜・日曜・祝日とお盆休み期間中の合計21日間に限り、同じ日に同じnimocaカードで西鉄の電車とバスを相互に乗り継いだ時、1回の乗り継ぎにつき、20ポイント(20円相当)を利用者に提供する。独自のCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)システム「nimoca顧客分析システム」(関連記事)を利用し、今回のキャンペーン効果を検証する計画だ。

 西鉄はnimoca顧客分析システムで33万8000人(2009年7月中旬時点)いるnimoca会員の利用履歴を一元管理しており、誰が、いつ、どこから、どんな経路で電車とバスを乗り継いだかを把握している。今回のキャンペーンでは蓄積された利用履歴データを使い、20円相当という最小限のポイント原資で電車とバスの相互利用を促す方策を探る狙いがある。

 ICカード事業部の奥村洋介氏は「従来型のマス広告を使った利用促進策では、効果検証の手立てが無かった。顧客分析システムができて初めて、容易に効果検証できるようになった」と説明する。

 西鉄以外の交通機関は、電車とバスの乗り継ぎ割引制度を以前から設けているところが多い。例えば、名古屋鉄道は80円を、大阪市交通局は100円を常時相互乗り継ぎ時に割り引いている。これらに比べれば、西鉄が始めたキャンペーンは20円分のポイント付与なので、割引幅がかなり小さい。しかも、対象日を土曜・日曜・祝日に限定している。

 つまり、西鉄は大幅な割引を避けつつも、利用者が環境負荷軽減に貢献してポイントを獲得できるという「行動経済学」(関連記事)に基づいたマーケティング効果を重視している。

 割引幅が小さいだけに、わずかでも相互利用件数を押し上げられれば、効果は大きい。しかも、利用履歴はすべて電子化されているため、区間別の乗り継ぎ利用件数を1件単位で把握でき、「キャンペーン前は乗り継ぎを利用していなかった人のうち、キャンペーン時には○人が利用した」といった検証が可能だ。

 西鉄は8月末のキャンペーン終了後に、今回の利用状況や利用者の年齢・住所・職業などの属性を分析する予定である。その結果を、今後のポイント付与幅の増減や、もともと電車の利用が多い平日のバス乗り継ぎ促進など、次のマーケティング企画の判断材料にするという。利用者が多い時間帯に、より相互に乗り継ぎしやすい運行ダイヤに改善することも検討している。