写真●日産流の改善を進めてきたロイヤルパークホテル内の中華料理店の厨房
写真●日産流の改善を進めてきたロイヤルパークホテル内の中華料理店の厨房
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 東京シティ・エアターミナルに隣接するロイヤルパークホテル(東京都中央区)が、日産自動車のノウハウを取り入れた改善活動で成果を上げた。2007年度から日産自動車の座間工場出身コンサルタントの指導を受けつつ、館内で1番人気のレストランで現場改善活動を続けてきた。店員や料理人の動きや食材の管理方法を変え、2009年春までの2年間でこの中華料理店の食材在庫を0.45日分削減できた。接客サービスの品質向上にも取り組んでおり、定量的な効果の測定方法を模索しているところだ。

 中華料理店で改善活動の成果を確認したことを受け、改善3年目となる2009年度中に和食やフレンチなど館内のほかのレストランでも日産流の改善活動を横展開する計画だ。ホテルのレストランに、製造業の改善ノウハウを導入する事例は珍しい。

ホテル従業員に生産現場の改善作法を教える

 最初の改善現場に中華料理店を選んだのは、メニューの豊富さや店員の動きの複雑さを考慮したからだ。同店のメニューは180種類に及び、客席のバリエーションは通常のテーブル席に加えてカウンター席や個室などがある。それだけに食材の数が多く、店員の動きは複雑である。そこで指導に当たったプロフェッショナルネットワーク(横浜市)は、中華料理店の厨房に日産の生産管理に相当する考え方を適用した。具体的には、お客のオーダー数予測に基づく食材発注と、料理人や店員の適正配置に取り組んだ。

 まずパレート分析で、180メニューのうち販売数量の約80%を占める上位45メニューを選び出した。対象を絞り込むことで集中的に改善するためだ。この45メニューの注文数を過去の実績から予測して、毎週の食材使用量を一覧表にまとめた。

 また、冷蔵庫の中の食材の置き場所を決め直して、どの食材がどこに今いくつあるのかを見える化した。過剰在庫を生む無駄な発注を防ぐためだ。それが食材在庫を0.45日分削減する成果につながった。

店員が動きやすいようにして接客を改善

 接客の改善活動では、想定される顧客の「要求事項」のキーワードをブレーンストーミングとKJ法で洗い出した。顧客ごとにホテルやレストランに求めるものが異なるため、まず状況を整理したのだ。

 そして、すぐにでも改善が必要な「お客様をお待たせしないタイミングのよいサービス」などの障害を取り除いていった。中心になって改善を担当したのは2004年から発足した全部門にまたがる「品質向上推進委員会」のメンバーたちだ。料理をタイミングよく提供できるように整理・整頓を徹底し、料理の運搬通路を確保し、飲み物の提供位置を変更するなどしながら、店員の動きを変えた。

 接客の改善活動についてはまだ課題もある。効果の定量評価のやり方をどうするかだ。「何度も同店をご利用いただいている常連のお客様に変化を感じたかどうかをお聞きするのが一番望ましいが、お食事を楽しんでいるお客様に質問するのはなかなか難しい」(総務部人事課の越前谷権マネージャー)と頭を悩ませている。