写真●PLMシステムの画面例。<br>開発タスクの進ちょくを管理し、ワークフロー機能で関係者に承認を促す。
写真●PLMシステムの画面例。
開発タスクの進ちょくを管理し、ワークフロー機能で関係者に承認を促す。
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 クラリオンはカーナビなどの開発プロセスの効率化を目的に、受注、設計、試作、量産に至るプロセスを包括的に管理する情報システムを2009年5月に稼働させた。10万点に及ぶ図面や部品情報、開発の進ちょくを同システムによって見える化した。さらに開発フェーズで関係者が何度も機動的にレビューすることで設計品質の向上を図る。開発リードタイムや試作回数、開発コストを3割削減する目標を掲げている。

 同社が開発業務の見直しに踏み切ったきっかけは、2009年4月に実施した子会社ザナヴィ・インフォマティクスとの合併だった。カーオーディオやカーナビを中核に、車載端末を幅広く手がけるクラリオンと、日産自動車と日立製作所の合弁会社としてスタートし、自動車メーカーへのカーナビのOEM(相手先ブランドによる生産)供給を中核事業としてきたザナヴィとでは、開発プロセスに様々な違いがあった。そこで統合に先立って「クオリティ・マネジメントシステム(QMS)委員会」を立ち上げ、開発プロセスの標準化を進めてきた。開発工程の節目でのレビューの方法や、関係者間の情報共有、承認プロセスを統一した。同時に、従来のプロセスの無駄を洗い出してきた。

 こうして標準化した開発プロセスを現場に定着させるために、PLM(製品ライフサイクル管理)システムを導入した。クラリオンとザナヴィで別々に管理していた10万点の部品や図面、取引先などの情報を一元管理し、関係者が共有できるシステムだ。開発が進む間、関係者が図面などの成果物をシステムに登録すると、あらかじめ指定された関係者に確認や承認の依頼が自動通知される。通知を受けた関係者は同システム上で必要な情報を確認できる。日立製作所が外販する「日立PLMテンプレート」をベースに、日立コンサルティングが開発した。

 今回の新システムが稼働した2009年5月から、まず2商品の開発で今回の管理方法を適用した。対象はカーナビの市販品と、自動車メーカー向けOEM商品である。設計着手時に予測した工数やコスト、期間通りに開発が進んでいるかをPLMシステム上で関係者が確認しながら、構成要素を擦り合わせ、設計変更の必要性などを検討している。

 今後は下流工程の金型開発や試作、試作品の検証、量産開始などのプロセスにも活用していく。遠隔地の担当者とも迅速に進ちょくを共有できるため、開発リードタイムの短縮に寄与する。関係者が漏れなく進ちょくを確認することで、設計のやり直し(手戻り)を減らせるとも期待している。

 開発統括本部技術推進部の藤原茂部長は、「従来は開発プロジェクトの節目で開くレビュー会議に、関係者が図面を持ち寄って集まっていたが、今後は会議でもシステムを活用してペーパーレス化を推進する。将来的にはシステム上でのバーチャル・レビューを増やして会議の回数も減らし、開発プロセスを一層スピードアップしたい」と話す。

 今回のシステムの構築に先立って、ザナヴィとクラリオンでばらばらだった部品コード体系を統一するなど、情報基盤も整備した。「PLMシステムは2社統合の象徴的存在。活用を軌道に載せることで、風土の融和も進むと期待している」と藤原部長は話す。