村田製作所はウェブサイトを通じたブランド強化のプロジェクトが順調に成果を上げている。2008年3月から2009年3月にかけて日英中3言語の製品情報と企業情報のページを順次リニューアル。外部の調査会社を通じて実施したインターネットユーザー420人への調査結果では、2007年1月から2009年1月にかけて、ウェブサイトを見たことがあるという回答は14%から20%に、村田製作所の認知度は74%から80%へとそれぞれ6ポイント高くなった。
 
 2年半に及ぶプロジェクトを担当した広報部企業広報課の高橋正嗣氏は「ここまで大がかりな改革になると最初は思わなかったが、期待以上の成果だ。SEO(検索エンジン最適化)対策を実施したり、企業情報を拡充したりしたことが奏功して幅広い層に見てもらえるようになった」と語る。

 リニューアルプロジェクトは、2006年に村田製作所に転職した高橋氏の発案で始まった。広告業界でウェブディレクターとして働いた経験を持つ高橋氏から見て、当時の村田製作所のウェブサイトには3つの問題点があった。1つ目はウェブに対する戦略の欠如。本体と子会社、海外拠点それぞれが10に及ぶサイトを運用していた。当然、ユーザーが各サイトから受ける印象が異なっておりブランドイメージが散漫になっていた。

 2つ目の問題点は、製品重視のページ構成で企業ブランドがユーザーに伝わりにくかったことだ。企業の歴史や文化よりも製品、技術に重きを置いたサイトだったために、取引先の関係者以外からはあまり見てもらえていなかった。3つ目は運用面の問題で、HTML(ハイパー・テキスト・マークアップ言語)の知識を持つ社員がいない職場では更新作業が負担になっていたり、広報部長にまで紙の稟議書が回らないと更新できない業務ルールになっていたりと、不便だった。

 そこで2006年末からウェブサイト制作の外注体制や、制作ガイドライン、運用方針の見直しを開始した。子会社や拠点ごとに別々だったサイトの制作・運用の外注先を本社広報部が指定する企業に絞り込んだ。ページデザインのテンプレート(ひな形)を共有してもらうなど、制作ガイドラインを見直した。このリニューアルプロジェクトではIT(情報技術)ベンダーのネットイヤーグループに手を借りた。

 その結果、グループ全体でサイトの印象に一体感が生まれたうえ、子会社でデザインや画面の再設計を含むサイトリニューアルに要する費用が従来のおよそ半分の200万円で済むようになった。現場が広報部長に更新の認可を求めるときの手続きはイントラネット上で完結できるようにした。

 サイトの構築費用の削減や、情報更新に要する現場の労力軽減を確認できたことで、高橋氏はより小規模の子会社にもサイトの構築やリニューアルを呼びかけている。24ある国内連結子会社のうち、リニューアルに着手する時にウェブサイトを持っていたのはわずか6社だった。それが2009年7月現在で16社まで増えた。「『小さな会社には(サイトは)不要じゃないか』という声も社内にあったが、小規模な企業でも地元での存在感は大きく、何らかの情報発信はするべき。企業の顔になるサイト作りは不可欠」と高橋氏は語る。