写真●幸楽苑の新井田傳代表取締役社長
写真●幸楽苑の新井田傳代表取締役社長
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 ラーメンチェーン大手の幸楽苑が、顧客から寄せられるクレームを削減する運動を全店で展開し、成果を上げている。2009年4月に寄せられたクレームは全店約420店の合計で月間59件と、活動開始からの2年半で10分の1に減らすことに成功した。活動開始後の2007年3月期から業績も増収増益に転じており、クレーム削減運動が一役買ったと考えられる。

 クレーム削減運動は2006年10月に開始した。当時の同社は3期連続の増収減益に陥りかねない危機のさなかにあった。苦境を打開するために実質的な創業者の新井田傳氏が代表取締役社長に復帰すると、改革の一環でクレーム削減運動を打ち出した。

 新井田社長は「急激な出店戦略がたたり、店長不在で運営する店舗が70店にも及ぶなど現場のマネジメントが崩壊していた」と当時を振り返る。マネジメントの崩壊ぶりは、クレーム件数の多さに表れていた。同時期の店舗数が約350店であるのに対し、クレームは月間600件以上に達していた。平均すると1店舗当たり月間1件以上のクレームが寄せられていたことになる。

 そこで新井田社長は、毎週開催する部次長会などで、顧客から寄せられたクレームを洗い出すようにした。どの店舗の誰が引き起こした問題なのかなどについて調べ、クレームを招いた店舗については会議で容赦なく指摘し、再発防止策を確認して徹底させるようにした。会議で指摘することで、ほかの店舗との共有を図った。

 一連の努力が実り、店舗数は開始当時より増えたにもかかわらず、クレーム件数は10分の1まで減らせた。現場のクレームに対する意識も確実に高まってきた。例えばクレームの対象となり得るトラブルが店舗で発生した際にも「店長や店員が取った対応が誠実だった」と顧客が賞賛の意見を寄せてくれるようなケースが出てきたという。

 ただし、新井田社長はクレーム削減運動の成果にまだ満足しておらず、全店で月間50件以下と、現在の水準の約80%以下に減らすことを当面の目標に掲げる。さらに、「調理品質など、顧客から直接的なクレームが寄せられにくい“見えないクレーム”にも対処しなければならない」(新井田社長)。そこで2008年8月から、ギョーザや炒飯などの調理技術レベルを底上げする施策を開始。見えないクレームの削減にも努めている。