中古ブランド衣料品のネットオークション事業を手がけるサイバーエージェント子会社のクラウンジュエルが、「クラウドソーシング」と呼ばれる手法を駆使して出品時の事務作業のコスト削減に成功した。クラウドソーシングとは、不特定多数のインターネットの利用者に知的労働を委託する手法のこと。同手法を2009年5月から本格導入し、1カ月間の実績で従来の体制と比べて約3割の作業コスト削減に成功した。

 クラウンジュエルのビジネスモデルは顧客から買い取った衣料品をウェブサイトに出品して別の顧客に転売するものである。商品の出品時には衣料品の写真を撮影して掲載するのだが、その前に画像の明るさを調整するといった加工作業が必要になる。この作業にクラウドソーシングを取り入れた。2009年3月に試験導入して効果を検証。同年5月に本格導入した。

 クラウドソーシングを活用する以前の同社は、この画像加工の作業を中小企業に外注していた。しかし2008年秋以降、出品が急増したことを契機に体制を見直した。月間の出品数が前期比2倍の数千に達したのだ。出品時に1商品当たり5点の画像を撮影しているため、加工するべき画像は数万点にもなる。作業コストの上昇が大きな課題になった。そこでポイントサービスなどを手がけるリアルワールド(東京都渋谷区)のネット会員に加工作業を委託するクラウドソーシングに2009年3月から踏み切った。

 作業を請け負うリアルワールドの会員は、主婦など画像加工のスキルを持たない一般の人がほとんどである。そこで指示通りに操作すれば、明るさの調整などの標準作業を一通りこなせるよう、リアルワールドは画像加工ツールを独自開発した。こうした工夫などが奏功して作業品質は1~2カ月で安定した。


1日当たり1000~1500点の画像加工を委託

 クラウンジュエルは同年5月下旬にクラウドソーシングの活用範囲を広げた。委託する画像点数を当初の2~3倍に相当する1日当たり1000~1500点に増やし、さらに加工後のチェック作業もリアルワールドの会員に委託した。一人ひとりのチェックの精度はクラウンジュエルの担当者にかなわないが、「複数の会員がチェックすることで100%近くまで精度を高めている」(リアルワールドの菊池誠晃代表取締役社長)という。

 クラウンジュエルの宮澤高浩商品管理局マネージャーもチェック精度は十分だと判断している。社内で実施していた画像チェックの体制は2重チェックから1回のみに減らした。チェック体制の見直しによるコスト削減効果は算出していないが、「これまでチェック作業を担当していた社員に、より付加価値の高い業務を任せられる」(宮澤マネジャー)と高く評価している。